1 総論

 物損に関連する慰謝料第2弾として、今回はペットが交通事故で死傷してしまった場合、飼い主に 慰謝料が認められるかという点についてお話したいと思います。

 物損の慰謝料は原則として認められていませんが、特段の事情といった例外的な要素があれば、認められます(東京地判平成元年3月24日)。
 犬などの愛玩動物は、飼い主との間の交流を通じて、家族の一員であるかのように、飼い主にとってかけがえのない存在になっていることが少なくありません。
 そのような動物が不法行為により重い傷害ないし死亡してしまったことで、精神的苦痛を飼い主が受けたときには、財産的損害の賠償によっては慰謝されることのできない精神的苦痛があるものと見ることができますので、財産的損害に対する損害賠償のほかに慰謝料を請求することができる場合があります。

2 裁判例の紹介

 (1)6万5000円で購入した飼い犬が自動車事故で後肢麻痺、自力での排尿等ができない状態になったため、飼い主夫婦にそれぞれ20万円の慰謝料を認めた上で、犬用シートベルトをしていなかったため1割の過失相殺をし、それぞれ18万円の支払いを認めた事例があります(名古屋高判平成20年9月30日)。

 この裁判例では、飼い主と犬との関係について、子供のいない飼い主らは、我が子のように思って愛情を注いで飼育していたものであり、飼い主らとの交流を通じて、家族の一員であるかのようにかけがえのない存在になっていたこと、が認定されており、慰謝料を認める上で重要な要素になっているものと思われます。

 (2)また、交通事故で死亡した被害者の夫と子らが損害賠償を請求した事案において、犬の葬儀費用2万7000円のほかに、長い間家族同然に飼っていたことを理由に飼い主である夫に慰謝料5万円を認めたものがあります(東京高判平成16年2月26日)。

 この裁判例では、子らは犬とは同居しておらず、犬は父母宅で飼われていたために犬の飼い主ではないとして、慰謝料請求は認められていません。

3 最後に

 物損慰謝料に関しては悩ましい点も多いかと思いますが、何かお困りの際は、ぜひ我々弁護士にご相談ください。