今回は、交通事故で頸椎捻挫等の怪我を負った際に、外傷性と認定されるためのポイントをご説明します。
1 はじめに
交通事故で、頸椎捻挫等の傷害を負い、最終的にも完治しなかった場合、後遺障害等級申請をすることが多いと思われます。
その際、自賠責での認定にあたり、後遺症の認定を否定する理由とされるのが「経年性」というものです。
例えば、事故後ヘルニアが存在することがMRI画像等で確認されたとして、それが事故により生じたのか(外傷性)、年齢によって変化してきたのか(経年性)、を判断する必要があります。法律的には、当該ヘルニアに関しての、事故との因果関係が問題にされていることになります。
外傷性か否かの判断は、非常に難しい所があり、以下、そのポイントを解説します。
2 外傷性の判断となるポイント
(1) 事故状況
後遺障害等級申請にあたっては、物損事故の状況とは無関係に話が進んでいくように思われますが、実際には事故状況が一つのポイントとなります。
大きな衝撃を受けたと考えられる場合ほど、事故により生じたと認められやすくなります。
(2) 年齢
経年性がポイントとなっているので、実際、経年生変化があまり生じていなくてもおかしくない年齢であることもポイントとなります。
一般には35歳あたりが境目ではないかと言われていますが、もちろん個体差があるため、絶対的な基準ではありません。
(3) 過去の経歴
例えば、過去に頸椎や腰椎に負担のかかる仕事やスポーツをしていた場合 、経年生の変化が早めに生じる可能性があるため、一つの判断要素となります。
(4) 症状が出るまでの時間
ヘルニアが一気に発生するほどの衝撃を受けたのであれば、軟部組織にも損傷が生じ、早期に可動域制限が生じていたと考えられるため、早期に強い症状が出ていると考えられます。
(5) MRI 画像
画像上、椎間板ヘルニアの箇所が1~2か所にとどまっていることがポイントとなります。多くの箇所に存在するほど、経年生の可能性が高まるため判断のポイントとなります。また、変性の存在が少ないことも同じ理由から、ポイントとなります。
(6) レントゲン写真
ヘルニアの箇所に、骨棘・椎間板狭小化がある場合、同じく経年生の変化だと考えられるため、判断のポイントとなります。
(7) 神経学的所見
ヘルニアがある部分に一致した神経学的所見が受傷直後から見られることも、一つのポイントとなります。
(8) 主治医
主治医が専門医であることも、一つの要素とされるようです。
3 まとめ
以上のようなポイントを参考に、外傷性であることをきちんと説明していくことが必要となります。
あくまでポイントなので、どれを満たしていれば認められる、という「基準」とは異なりますが、目の付け所として参考にしてみると良いと思います。
弁護士 水野太樹