相談
先日、追突事故を起こしてしまいました。私の不注意によって、被害者の方に怪我を負わせてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいです。さらに、最悪なことに、任意保険には問題なく加入していたのですが、自賠責保険については、手違いで期限切れの状態となっていました。
この場合、被害者の方への賠償は、任意保険会社が全て対応してくれるのでしょうか?
回答
1 任意保険は「上積み保険」
任意保険の対人賠償は「上積み保険」といわれ、自賠責保険を超過した損害についてしか支払われることはありません。
典型的な任意保険の約款においても、例えば、「当社は、自賠責保険によって支払われる金額を超過する場合に限り、その超過額のみを保険金として支払う」といったような規定が置かれているケースが多いです。
これに対し、自賠責保険は「強制保険」ともいわれ、適用除外自動車を除けば、自賠責保険に加入しなければ運行することができないことになっています。
2「上積み保険」⇒自賠責の超過分のみ!
ところが、実際には、今回のケースのように、期限切れの状態で運行している車が存在します。このような車が交通事故を起こした場合、自賠責保険はついていないので、当然、自賠責保険が支払われることはありません。
もちろん、任意保険に加入しているので、任意保険金は支払われますが、先ほども言いましたとおり、任意保険は「上積み保険」ですから、自賠責保険の支払い対象となっている損害については支払われず、自賠責保険から支払われるべき損害を除いた金額のみが支払われることになります。よって、「被害者の方への賠償は、任意保険会社が全て対応してくれるのでしょうか?」というご質問に対する答えは「ノー」となります。
3 では、被害者はどうなる!?
この場合の被害者としては、自賠責保険に加入していない車両事故や加害車両が不明な場合(ひき逃げなど)に適用される「政府保障事業による填補金の請求(自賠法72条1項)」を、いずれかの自賠責保険会あるいは自賠責共済を通じて政府に対して行うことができます。この手続きをとれば、被害者は、加害者に十分な資力がなくても、自賠責保険が支払われる場合と同程度の補償を受けることができることが多いと思われます。
しかし、填補金が支払われた場合であっても、填補金を支払った政府は、加害者に対して、被害者の方が持っている損害賠償請求権を代位して求償することができますので(自賠法76条1項)、相談者さんが免責されるということではありません。
弁護士 細田大貴