相談

 年末年始のことですが、東京で働いている息子が家族を連れて、新幹線で新潟に帰省してきました。ところが、新潟に滞在中、雪道での運転に不慣れな息子は、私の車を運転中にハンドル操作を誤り、追突事故を起こして被害者に大ケガを負わせてしまいました。この場合、私の加入している任意保険は適用されるのでしょうか?ちなみに、保険証券の「記名被保険者」欄には私の名前が書いてあります。

回答

1 任意保険で、保険金を支払ってもらえる人のことを「被保険者」といいますが、その範囲は保険契約の約款に定められています。よって、約款をよく確認する必要があります。例えば、以下のような約款が一般的です。

『① この賠償責任条項において、被保険者とは次の各号のいずれかに該当する者をいいます。

(1) 保険証券の記載の被保険者(以下「記名被保険者」といいます)

(2) 被保険自動車を使用または管理中の次のいずれかに該当する者
 (イ) 記名被保険者の配偶者
 (ロ) 記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
 (ハ) 記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子

(3) 記名保険者の承諾を得て被保険自動車を使用または管理中の者。ただし、自動車修理業、駐車場業、給油業、洗車業、自動車販売業、陸送業、運転代行業等自動車を取り扱うことを業としている者が業務として受託した被保険自動車を使用または管理している間を除く。

(4) 記名被保険者の使用者。ただし、記名被保険者が被保険自動車をその使用者の業務に使用しているときに限ります。

② この賠償責任条項の規定は、それぞれの被保険者ごとに個別に適用します。… 』

2 本件では、運転者は被保険者の息子さん(親族)ですが、一時的に帰省していたからといって「同居の親族」には該当するわけではありません(上記(2)(ロ)は適用されません)。

 しかし、息子さんが相談者の車を使用していたことについて、相談者の「承諾」があった場合には、上記(3)の規定により、保険が使用できます。相談者と運転者の親子という身分関係を考えれば、息子さんが車を運転することを相談者が承諾していたと推定できると思われますので、保険は適用されるでしょう。

 また、仮に、相談者さんが車の運転を承諾しておらず、息子さんが無断で車を運転していたというような場合であっても、相談者自身に車の所有者としての運行供用者責任認められる場合などには、保険が適用されることになります(自動車損害賠償保障法第3条は、自動車を自ら運転していた者だけではなく、他人に自動車を運転させて他人の運転を介して自動車を間接的に支配する者についても、運行供用者として、賠償責任を認めています。)。運行供用者責任は、泥棒運転などの例外的な場合を除いて、通常認められる傾向にありますので、対人賠償については、多くのケースで保険金が支払われると考えて良いでしょう。

弁護士 細田大貴