こんにちは。先日、横断歩道を渡っていた際、事故に遭われた方から、過失割合に関するご相談を受けました。

 一般的に、自動車対歩行者の事故の場合、自動車の過失が大きくなるというイメージをお持ちではないでしょうか。

 民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準を示した別冊判例タイムズ16 51頁には、被害者保護、危険責任の原則、優者危険負担の原則と説明されています。これは、つまり、自動車という一瞬にして重大な損害を与えうるものを操作している以上、運転者は歩行者よりも高度な注意義務を負い、歩行者との衝突を避けるべき重い責任が課せられることを意味しています。そこで、同じ事故状況でも自動車対自動車に比べ、自動車対歩行者の方が、自動車の過失は大きくなり、その範囲では上記イメージは間違ってはいません。

 もっとも、常に自動車の過失の方が歩行者より大きくなるかというと、実は、そんなことはないのです。

 たとえば、歩行者の信号が赤で車の信号が黄色の場合、横断歩道上の事故であっても、基本の過失割合は自動車5割、歩行者5割となります。

 次に、歩行者の信号が赤で車の信号が青の場合は自動車3割、歩行者7割となり、歩行者の方が過失は大きくなります(もっとも、車対車の場合は赤信号無視の車に10割の過失がつきますので、自動車に3割の過失がつくところは被害者保護、優者危険負担の原則から修正がおこなわれているといえます。)

 判例では、交差点手前の横断歩道を赤信号無視で右折待機車の間から傘をさして小走り横断してきた歩行者と、左側車線を青信号で交差点通過しようとした加害貨物車が衝突した事例で、歩行者に10割の過失を認めたものがあります(東京地裁 平成4年10月16日判決)。事故当時は雨が降っており、横断歩道上の見通しは不良でしたが、判例は、「信号が青であるのに、信号無視で横断してくる歩行者等があることを予測して徐行を義務づけることはできない」としており、信号無視をした歩行者の不注意を重視した判断を下しています。

 自動車対歩行者の事故では、歩行者が重傷を負われることも少なくありません。事故に遭われないことがもちろん一番望ましいのですが、横断歩道を渡られる時は、歩行者も周囲や信号を確認してから渡っていただきたいと思います。