1 評価損とは?
事故車を売却しようとしたら、事故歴・修理歴のせいで安く買い取られてしまった、あるいは事故車を通常よりも安く購入したという経験をお持ちの方はいるでしょうか?このように、事故車を修理した場合に、事故歴・修理歴によって自動車の商品価値が低下することがありますが、これを「評価損」といいます。
2 保険会社の対応
保険会社はあまり評価損を認めません。自動車のフレーム等の骨格部分にまで損傷が及ぶような、損害が非常に大きい場合でないと、なかなか評価損を認めてくれないようです。また、評価損を認める場合でも修理費の1~2割程度の割合で制限的に算定することが多いようです。
3 評価損の立証方法
評価損を立証するためには、(財)日本自動車査定協会(以下「査定協会」といいます。)が発行する「事故減価額証明書」を使われると良いでしょう。事故減価額証明書を発行してもらうには、査定協会に修理の見積書を送付する必要があります。また、見積書だけでなく、事故車の現物を見せてほしいと言われることもあるようです。
なお、査定協会の事故減価額証明書は、全ての事故車について発行してもらえるというわけではなく、修復歴車に該当する場合しか発行してもらえません。修復歴車とは、「交通事故やその他の災害により、自動車の骨格などに欠陥を生じたものまたは、その修復歴のあるもの」と定義されていて、リヤバンパーやトランクフード等の骨格部位で無い箇所を交換しても、修復歴車とはならないことに注意が必要です。
4 裁判例の傾向
査定協会の査定額に基づき、評価損を認めた裁判例もありますが(たとえば、大阪地判平12.9.6、東京地判平25.1.9)、修理費のうちの何割かを評価損と認めている裁判例が多いようです。査定協会の事故減価額証明書には、評価額の根拠が記載されておらず、基準が不明確であることが理由の1つであると考えられます。
新車や高級車であればあるほど、修理費に対して高い割合での評価損を認める傾向にあるといわれています。修理費の5割程度を評価損として認めた裁判例もありますが、これは稀なケースで、多くは、修理費のうちの3割程度が目安とされているようです。近年の裁判例で修理費の5割を評価損として認めたものとして、納車から1週間も経っていない比較的高額の車両について「通常よりも大きい」評価損を認めるのが相当であると判示したものがあります(横浜地判平24.10.29)。
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