こんにちは。今回から毎週1回、交通事故に関するブログを書かせていただきます。よろしくお願い致します。
交通事故を起こした場合、その事故態様によっては自動車運転過失致死傷罪(刑法211条2項)、危険運転致死傷罪(刑法208条の2)等の刑法上の責任が生じたり、免許取り消しや免許の停止などの行政上の処分を受けたり、被害者に対する損害賠償の支払義務という民事上の責任が生じたりします。
本日は、交通事故に関する民事上の責任の一つである運行供用者責任について解説します。
車を運転される方は、自賠責保険(正式には自動車損害賠償責任保険といいます。)をご存じのことと思います。(なお農業協同組合や消費生活協同組合等が共済責任を負う自動車損害賠償責任共済もありますが保障内容は自賠責保険と同じです。)
この自賠責保険は、加害車両の「保有者」(自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するもの・自動車損害賠償保障法(以下、「自賠法」といいます。)2条3項)に自賠法3条の損害賠償責任が生じたときに、被保険者が被害者に支払った損害賠償額について自賠責保険会社が被保険者に対し保険金を支払ったり(自賠法15条)、被害者から自賠責保険会社に対し請求があれば自賠責保険会社から一定の保険金額の限度で損害賠償額を支払ったりする(自賠法16条)制度です(自賠法11条参照)。
上に述べた自賠責保険の対象である自賠法3条の損害賠償責任を運行供用者責任といいます。なお、車泥棒による事故など運行供用者責任が発生しても保有者に運行供用者責任が発生しない場合には自賠責保険の対象とならず、政府保障事業により損害が填補されます(自賠法72条1項)。
では、自賠法3条を詳しく見てみましょう。
「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」(自賠法3条本文)
まず、運行供用者責任は、「自己のために自動車を運行の用に供する者」、すなわち、運行供用者について生じます。いかなる者がこれに当たるかについては多く議論がありますので、次回以降に、詳しく説明させていただきます。
次に、「他人の生命又は身体を害したとき」という文言から明らかなように、運行供用者責任は、人身事故についてのみ生じます。先に述べたとおり自賠責保険は、運行供用者責任を対象とするものですから、自賠責保険では人身事故についてのみ保険金の支払い対象となります。
自賠責保険から支払われる保険金額は、上限が政令で定められており、死亡につき3000万円、後遺障害につき75万円~4000万円、傷害につき120万円とされています(自賠法13条・自賠法施行令2条)。
このように自賠責保険の保険金額は損害を完全に填補するためには不十分な額ですので(例:年齢30歳の主婦の死亡逸失利益は約4000万円)、任意保険に入ることは必須です。
さらに、「他人の生命又は身体を害したとき」の文言から明らかなように、運行供用者責任が生じるためには、人身損害が「他人」に生じることが必要です。
この点については、運行供用者以外は「他人」に当たるといった単純な判断はなされていません。この点についても、次回以降に、詳しく説明することとさせていただきます。