こんにちは。
今日は、自動車の任意保険、特に対人賠償責任保険について、保険が使用できる場合、使用できない場合、保険金が支払われる場合、支払われない場合について、お話ししたいと思います。

 なお、以下のお話は、ある大手保険会社の保険約款の内容を前提にお話ししますが、保険約款が前提と異なる場合には、結論も異なってきますので、ご留意ください。

 任意保険の対人賠償責任保険は、被保険車両の所有・使用・管理に起因して他人の生命または身体を害した結果、被保険者が第三者に対して損害賠償責任を負担することによって被る損害をてん補する保険です。

 ここで「被保険者」とは、たいてい以下のように約款に定められており、被保険者ごとに個別に約款の規定が適用されます(個別適用)。

 記名被保険者
 被保険車両を使用・管理中の次のいずれかに該当する者
  記名被保険者の配偶者
  記名被保険者又はその配偶者の同居の親族
  記名被保険者又はその配偶者の別居の未婚の子
 記名被保険者の承諾を得て被保険車両を使用中の者(自動車取扱業者を除く)
 記名被保険者の使用者(記名被保険者が被保険車両を使用者の業務に使用している場合)

 したがって、記名被保険者以外の者が被保険車両を運転していた場合についてみると、たとえば、記名被保険者(A)の友人BがAの承諾を得てA車を運転中に交通事故を起こしたときは、被保険者として保険が適用されることになります。しかし、A車が盗難にあって、犯人Cが自動車を運転中に交通事故を起こしたときは、被保険者には該当しませんので、任意保険が適用されません。

 また、被保険者が被保険車両を使用・管理中の事故であっても、以下のいずれかの事由に該当する場合には、保険会社は免責され、保険金が支払われません。

 契約者、記名被保険者、その他被保険者の故意
 異常危険、災害
 被保険者と特別な関係にある被害者の損害
  記名被保険者
  被保険車両を運転中の者又はその父母、配偶者若しくは子
  被保険者の父母、配偶者又は子
  被保険者の業務に従事中の使用人
  被保険者の使用者の業務に従事中の使用人(被保険者が被保険車両をその使用者の業務に使用している場合)

 たとえば、記名被保険者Aの友人Bの運転で、A、B、Aの妻aの3人でドライブ中に交通事故にあったとします。
 この場合、被保険者は、記名被保険者であるAと、記名被保険者Aの承諾を得て被保険車両を運転していたBの2名です。そのため、AとBと個別に免責事由を考えていくことになります。
 まず、Aについてみると、「記名被保険者」であるA自身の損害は免責、Bに対しては、Bが「被保険車両を運転中の者」であるため免責、aに対しては、「被保険者の配偶者」であるため免責、結局、被保険者Aの対人賠償責任はてん補されません。
 しかし、Bについてみると、A、Bについては同じですが、aについては、被保険者(B)と特別な人的関係にはなく、保険金が支払われることになります。
記名被保険者Aの対人賠償責任保険で、被保険者Bのaに対する対人賠償責任がてん補されることになるのです。

 以上のお話は、すべて約款の規定内容によって左右されます。契約されるとき、約款の内容をすべて理解して契約される方はまずいらっしゃらないでしょう。
 しかし、事故が起きたときは、保険契約の約款をよく確認してみてください。