被害者にも過失がある場合は「過失相殺」になる
民法では、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」(722条2項)と定められています。
このように定められている趣旨は、被害者にも過失がある場合、発生した損害の全部を加害者に負担させるのは公平の理念に反するというところにあります。
したがって、交通事故においても、被害者にも過失が認められる場合(例えば加害者の過失7割、被害者の過失3割の場合)、被害者の損害賠償請求について、全額ではなく、一部のみ(7割部分)認められることになります。
本人以外の過失ではどうなるのか
では、冒頭の事例のように、被害者自身の過失ではないが、被害者サイドに過失がある場合、損害賠償請求にどのように影響するのでしょうか。
判例では、「被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者」の過失は「被害者側の過失」として被害者の過失に含まれると判断されています(最高裁昭和51年3月25日判決)。
<被害者側の過失が肯定された例>
- 妻を同乗させて運転する夫の過失
- 内縁の妻を同乗させて運転する内縁の夫の過失
<被害者側の過失が否定された例>
- 幼児の監護を委託された保育園の保育士の過失
- 同じ職場に勤務する同僚の過失
- 約3年前から恋愛関係にあったものの婚姻はしておらず同居もしていない恋人の過失
このように、判例が被害者側の過失として認めるものは、極めて近い親族関係・同居関係にある者の過失に限られていましたが、以下の判例ではこのような関係にはない者の過失も被害者側の過失と認めました。