2 むち打ち症に関する労働能力喪失期間

 労働能力喪失期間は、原則的には、就労年限(67歳)まで又は平均余命の半分のいずれか長い方とされます。
 しかし、むち打ち症の場合は、12級で10年程度、14級で5年程度に制限する例が多くみられる(平成28年赤本上巻87頁等)とされ、実務上も同年数が労働能力喪失期間の目安とされていることが多いです。

3 なぜむち打ち症については、労働能力喪失期間が制限されるのか

 諸説ありますが、馴化(=徐々に症状に馴れていく)とか、むち打ち症の症状が生涯続くことに疑義がある(ある程度の期間の経過によって改善するのではないかとの疑義)などが主な理由として挙げられます。

 特に後者の理由については、自賠責保険における後遺障害の定義(永久残存性)からすると、矛盾しているようにも感じるのですが、仮に自賠責が厳密な意味での永久残存性を要求しているのであれば、14級と認定されるむち打ち症は、かなり減少するとの見解もあるため、実際には、ある程度バランスが取れた解決と言えるのかもしれません。

※このあたりの分析は、平成19年赤本下巻に収録されている小林邦夫裁判官の講演録(もっとも、これはむち打ち症以外の神経症状に関しての分析がメインですが。)等が詳しいので、興味がある方は一読されると面白いかもしれません。