本日は、学生が、交通事故によって、後遺障害を負った場合の逸失利益の算定方法、裁判例についてご紹介します。
逸失利益は、基礎収入(事故前収入)× 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間によって算出されます。学生の場合には、現実収入がないため、基礎収入の算定が特有の問題になりますが、一般的には、賃金センサスを用います。
そうすると、当該学生が特別な技能等を有していた場合であったとしても、賃金センサスを用いることになるのかが、さらに問題になります。
この点に関し、東京地裁平成19年9月25日判決は、大学生(女性・症状固定時25歳)の高次脳機能障害等の障害(併合1級)を負った事案について、幼少時代から書道に才能を有し、書道に名門とされる大学・学部入学し、さらに書道に有していた才能を高めていたことから特別な技能を修得するに至っていたと認定し、大学を卒業した女性労働者の全年齢平均収入に1割を加算した金額を基礎収入としました。
また、東京地裁平成16年6月29日判決は、大学院薬学系博士課程在学中の学生(男性・症状固定時27歳)が高次脳機能障害等の障害(併合1級)を負った事案について、同学生は学業成績優秀であり大学からの助成金や内定を得た会社からも奨学金を得ており、同社に入社することが確実であったことから、同社の賃金体系に従い少なくとも次長になることは確実であったものとして、定年時までは大学を卒業した男性労働者の全年齢平均収入を1.4倍にした金額を基礎収入としました。
逸失利益の算定にあたっては、個別・具体的な状況による判断が重要になるため、お困りの際は、お気軽にご相談ください。