皆さんこんにちは。今日のテーマは「事業所得者の逸失利益」です。

 事業所得者の逸失利益の算定基礎額は、通常の給与所得者の場合に比して少し複雑です。

 個人企業を営む事業所得者は、家族、従業員の協力の下、事業を営んでいます。交通事故により生じた損害は、事業所得のうち、事業主個人が寄与して生み出した利益(本人寄与分)を補てんすることにより回復すると考えられています。そのため、算定基礎額の算出にあたり、家族、従業員の寄与した部分は差し引かなければならないと考えられています。

 そして、本人寄与分を把握するためには、実務上、事故前年度の所得税の確定申告書、確定申告書の附属書類を用います。

 しかし、事業所得者の方には、過少申告の方、あるいはそもそも申告していない方がいらっしゃいます。

 過少申告の場合は、金銭出納帳、伝票等、業務過程で作成する書類をもとに実収入を立証することが考えられます。しかし、保険会社や裁判所に実収入をもとにした逸失利益を認めてもらうのは立証の壁が高く、ケースバイケースで、依頼者様ごとに立証方法を精査していくことになります。

 また、申告がない場合は、平均賃金のデータである賃金センサスを用いて主張をしていくことが多いです。

 事業所得者の方の場合、実収入が確定申告書とイコールではないことがあるため、逸失利益が保険会社との間で争いになりやすいものです。争いになってしまい、確定申告書以外にどんな書類をそろえていいか、どんな主張をしていけばわからない…そんな方は、ぜひご相談ください。

弁護士 上辻遥