1.はじめに

 こんにちは、弁護士の辻です。
 交通事故に遭われた被害者の方は、もちろん加入されていることが前提ですが、自分自身の保険を使用して被害回復を図ることも可能です。
 ただそのような保険(特に車両保険等)を使用した場合、保険会社に支払わなければならない保険料が増加することがあります。
 その場合、増額した保険料を加害者に請求することができないのか、問題とされたことがあります。

2.増加保険料の損害性

 被害者自身が加入する車両保険金を受領して早期の被害回復を図るか、被告から適正な損害賠償金を得て被害回復を図るかは、被害者自身の選択の問題であるから、車両保険を使用することを選択した結果、保険料が増額したとしても、これをもって、事故による損害と認めることはできないとした裁判例があります(東京地判平成13年12月26日交民集34巻6号1687頁)。

 車両保険等は、あくまで被害者の方ご自身が使用するか否かを決定するものですから、それによって増加した保険料を加害者に支払わせることは認められないとしたものです。

 このような裁判例を踏まえれば、車両保険等を使って早期の被害回復を図る場合には、増加する保険料をよく確認したうえで使用される方が良いでしょう。