むち打ち損傷の場合によく問題となるのが、軽微事故からむち打ち損傷は生じないとして、事故とむち打ち損傷の因果関係が否定される場合があります。

 そして、クライアントから良く質問を受けるのが、医師の診断でむち打ちと診断されているのに、なぜ治療費まで支払ってもらえないのかという点です。

 これはむち打ち損傷が通常画像上現れず、医師は、被害者の自覚症状を前提に認定することが多々あるため、事故が軽微の事案においては、虚偽の自覚症状を疑われるためと考えられます。

 しかし、これは事故時においてしっかりと検査することで回避するしか方法はなかなかありません。(もちろん検査したからといって必ずしも虚偽と疑われることを回避できるわけではありません。)

 通常、事故時にCTやMRIは撮影することが多いですが、これで骨折等がないことが明らかとなった場合には、次にスパーリングテストやジャクソンテスト等の神経学的検査を行うことをオススメします。このように神経学的検査を行っておくことで、少なくとも自覚症状以外にも医師の診察をしっかり受けた上でのむち打ち損傷であることが認定されうるといえます。

 そもそも、低速度による衝突や軽微事故の場合、むち打ち損傷は発生しないと裁判所は考えているのでしょうか

 答えはNOです。もちろんすべての案件で認められるわけでありませんが、低速度による衝突や軽微事故ということのみをもって事故とむち打ち損傷の因果関係が否定されるものではありません。

 この点に関して、東京地裁昭和63年1月22日判決が事故とむち打ち損傷との因果関係を認めた少し変わった判決のため、御紹介致します。

 事案は、停車中の被害車両に加害車両が衝突したが衝突した事故で、追突時の加害車両の速度が時速約10キロメートルであったため、むち打ち損傷が生じるのかが争点となりました。

 判決は「原告は、赤信号のため停車中運転席に座ったまま上体を伸ばしてかがみ込み助手席前の床に落ちた荷物を取ろうとしたところ加害車に追突された」とし、「通常の姿勢を取っていれば身体に傷害を生ぜしめるようなものではなかった」が「本件事故の際には前記のように極めて不自然かつ無防備の態勢であったため、不意を突かれた原告は外傷性頸椎症候群及び腰椎捻挫」を負ったことを認め、原告の症状と本件事故との因果関係を認めました。(その他、認定事情は割愛します)

弁護士 坪井 智之