1.歯牙損傷と後遺障害等級
交通事故によって、歯を失ったり、歯牙を損傷した場合、その歯の本数によって、以下のとおり自賠責保険における後遺障害等級が認定されることがあります(ただし、歯を現実に喪失したか著しく欠損した場合に限ります)。
14歯以上 第10級4号
10歯以上 第11級4号
7歯以上 第12級3号
5歯以上 第13級5号
3歯以上 第14級2号
2.歯牙損傷と逸失利益
歯牙損傷については、それ自体では直接の労働能力喪失が生じないとして、後遺障害等級が認定されたとしても、後遺障害逸失利益を否定される場合があります。
もっとも、交通事故によって歯を多数失ってしまった場合、自信を喪失するなどして仕事に影響が出ることも十分にあり得ると思います。
そこで、まずは、歯牙損傷の場合にも、後遺障害逸失利益が認められるということを主張していくことになります。
仮に後遺障害逸失利益が認められない場合であっても、歯を多数失ってしまった被害者の方のショックは計り知れないということで、後遺障害逸失利益が認められない代わりに慰謝料を増額するべきだとの主張を行うこともあります。
3.インプラントと将来治療費
歯牙欠損に対して、インプラントを挿入した場合、定期的なメンテナンス費用や不具合が生じた場合の治療費等が生じることが予想されます。
症状固定後の治療費(将来治療費)は、認められないのが原則ですが、インプラントの場合、将来的に上記のような様々な費用が生じることがありますので、将来治療費が認められる場合があります(たとえば、インプラントの更新費用やメンテナンス費用を認めたものとして仙台地判平成24年2月28日)。