こんにちは。
 今日は、任意保険会社の示談代行制度についてお話したいと思います。

 任意保険の示談代行制度とは、任意保険の契約内容の1つとして、被害者から損害賠償請求を受けた被保険者・加害者に代わって、任意保険会社自らが被害者と交渉や示談、調停・訴訟のための手続き(弁護士の選任を含みます。)を行う制度をいいます。

 保険会社は、被保険者・加害者に対して支払責任を負うために示談代行をするため、保険会社に支払責任のない以下のケースでは、示談代行をすることができません。

① 無責任事故(被保険者に責任のない場合)
② 免責事故(保険約款に規定された免責事由に該当し、保険会社に保険金支払義務がない場合)
③ 自賠内事故(被保険者・加害者の負担する賠償額が自賠責保険の支払額の範囲内の場合)

 また、上記に加えて、損害賠償請求権者が保険会社との直接折衝に同意しない場合、被保険自動車に自賠責保険契約がかけられていない場合なども、示談代行はできません。

 この示談代行制度は、日常的かつ大量に発生する交通事故被害者の迅速な救済と、示談交渉に介入して不当な利益を上げようとするいわゆる示談屋の排除のために導入されたという経緯があります。

 示談代行制度は、保険会社による形式的・安定的な処理によって、迅速で公平な解決ができるようになったという点で、被害者救済に大きく寄与したことは間違いありません。また、任意保険会社によって賠償額の一括支払が行われていること、一括支払が被害者救済に大きく資するものであることとのバランスにかんがみて、保険会社が自ら示談解決を行えるようにする必要性が認められると思います。

 実際、加害者が任意保険会社に加入している場合と加入していない場合を比較すると、交渉の難度、賠償金の回収可能性など様々な点で、示談代行のありがたみを実感します。

 しかしながら、一方で、保険会社の示談代行によって、被害感情が悪化することもしばしばあると感じています。被害者にとっては、保険会社が窓口となることで、加害者の謝意を十分に感じられず、道義的部分の責任をなおざりにされていると感じることがあるようです。他方、加害者の側でも、保険会社が対応すれば十分であるとして、事故に対する責任感が希薄になっている人もいるように思います。

 交通事故による損害賠償請求は、算定基準に則って、ある程度形式的な処理が可能ではありますが、経済的な賠償では満足されない部分があるということを忘れないよう自戒したいと思います。