こんにちは。今回は、大阪地裁平成17年4月13日判決についてお話したいと思います。

 事案は、駐車禁止道路を自転車で進行していた被害者が、歩道に乗り上げ、右のドアを開けて駐車していた自動車(Y)があったため、車道中央に出たところ、別の自動車(Z)に追突されたというものです。

 判決は、Yは被害者の運転していた自動車に未接触であるものの、駐車場所の危険性や右ドアを開けていたという危険な駐車態様を考慮し、Yに損害賠償義務が認められています。

 また、本件の事故当時、被害者は38歳の既婚の男性会社員でしたが、事故により、3級3号の高次脳機能障害が残りました。被害者は一応日常生活を送ることは出来ましたが、スーパーで怒鳴ったり、試食品を食べ続ける等の奇行や子どもに暴力を振るう等の著しい人格変化がみられるようになりました。そのため、日常の看視等の介護が必要と判断され、日額2000円の介護料が認められています。

 加えて、本件では、被害者の妻自身の固有の慰謝料が請求されました。通常、近親者の固有の慰謝料は認められにくい傾向にあります。例えば、札幌地裁平成17年1月27日判決では、併合1級の後遺障害を残した21歳女子の介護をすることになった母親の固有の慰謝料請求につき、終生続く母親の将来の不安や心身の疲労に言及するものの、「支払にも比肩すべきものがあるとすることはできない」と判断されています。

 しかし、今回の事案では、被害者の妻は結婚8年目にして念願の妊娠をしていましたが、突然人格の変化した夫の介護に一生を費やさなければならなくなったこと、ショックのあまり、重度の妊娠中毒症となり、正社員として勤務していた勤務先を退職せざるを得なくなったことなどが考慮されたものと思われます。