今回は、東京地裁平成17年12月21日判決の判例を紹介したいと思います。

 事案は、被害者が、幹線道路青信号交差点の横断歩道を自転車で横断していたところ、加害者が運転する大型貨物車が衝突したというものです。被害者は、44歳の主婦で、パートタイムの仕事をしていました。被害者には、高次脳機能障害や外貌醜状などの後遺障害が残りました。

 被害者は、事故後、記憶障害や不機嫌、攻撃性、暴力などの人格変化が生じており、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」として、7級4号に該当すると主張しました。

 裁判所は、人格変化と本件事故との因果関係が必ずしも明白ではなく、頭部の画像では、脳萎縮、脳室拡大等の変化がないことから、脳実質を損傷したとする明らかな所見は認められないとし、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」とされる9級10号の判断を下しました。頭部の外傷により、人格変化などの精神障害を生じる場合、脳の委縮や脳室の拡大等、画像で確認できる変化が認められることが多いと指摘されています。ですから、本件のように、脳実質を損傷したとする明らかな所見が認められない場合は、9級の判断は妥当であると考えられます。

 次に、顔面の醜状障害について、被害者には、開口時に顔面にゆがみがでるという障害が残りました。

 この点、顔面の醜状障害については、実務上、①鶏卵大面以上のはんこん、②長さ5センチメートル以上の線状こん、③十円銅貨大以上の組織陥没のいずれかが残存し、かつ、人目につく程度以上であることが求められています。そして、今回の事例のような顔面のゆがみに関しては、「単なる醜状障害」とされ、一律、12級14号と認定されています。本件は、①から③には該当しないため、被害者は12級14号との認定を受けました。

 もっとも、顔という最も目立つ部位に障害が残った場合、上記①から③に該当しなければ、12級という比較的低い等級であるのは不合理であるように思います。等級自体は12級とし、後遺障害慰謝料の点で増額を図るという解決もあるでしょうが、等級自体の見直しがされてもよいのではないかと思います。