平成23年の後遺障害別等級表によると、「女子の外貌に著しい醜状を残すもの」は第7級12号、「男子の外貌に著しい醜状を残すもの」は第12級14号に該当しました。また、「女子の外貌に醜状を残すもの」は第12級15号、「男性の外貌に醜状を残すもの」は第14級10号に該当しました。

 このように、平成23年以前は、外貌醜状について女性を男性よりも重く見ていました。

 ところが、労災についての京都地判平成22年5月27日判タ1331号107頁は、労災で「外貌に著しい醜状を残すもの」として顔などに怪我が残った場合、労働者災害補償保険法施行規則14条、別表第1(障害等級表)が、女性の障害等級を7級、男性を12級と規定し、男女によって5級もの差が設けられていることは、著しく不合理で憲法14条1項に違反すると判断し、労働基準監督署長のした障害補償支給処分を取り消しました。厚生労働省は、障害等級の見直しに入り、労災保険法施行規則を改正し、男女とも、外貌に著しい醜状を残すものは7級、外貌に相当程度の醜状を残すものは9級、外貌に醜状を残すものは12級としました。そして、これに準拠している自賠責保険の障害等級も改定されることになりました。

 これまで、女性を男性と差別して取り扱うことが憲法14条1項違反に当たるかどうかが問題とされることは多くありました。しかし、今回のように男性を女性と差別して取り扱うことを憲法14条1項違反に当たるかどうかが問題とされることは珍しいことです。男女差別の考え方が、女性を男性と差別なく扱おうという考え方から両性を差別なく扱おうと変化してきているのではないかと思われます。

弁護士 大河内由紀