こんにちは。今回は素因減額事由として、椎間板ヘルニアについてお話ししたいと思います。

 交通事故により頸椎や腰椎を捻挫し、レントゲンやMRI検査をしたところ、椎間板ヘルニアが見つかったということがあります。そこで、一見、椎間板ヘルニアという画像所見があるので、後遺障害等級12級だということになりそうだと思われるかもしれませんが、そんなに簡単な話でもありません。

 椎間板は年齢を重ねていくと弾力を失い変形していきます。また、首や腰を酷使するような激しいスポーツをしていた場合は若年でも変形していることがあります。そのため、事故によってヘルニアになったのではなく、もともとヘルニアがあったけれども、事故によって自覚症状が出てきただけだとして因果関係が争われることは少なくないのです。しかし、事故前に椎間板ヘルニアの検査をしていることは稀だと思われます。

 このような場合、例えば、事故前から頸部の痛みや肩の張りなどを訴えて治療に通っていた場合は、事故前に椎間板ヘルニアがあった可能性が高くなります(東京地裁平成23年11月30日 事故前から頸部の治療に通っていたので素因減額が認められた事例。但し、事故前に訴えていた症状は事故後のものよりも軽度であったことから2割の減額にとどまりました。)。

 また、事故の態様も因果関係の有無を判断する材料の一つとなります。東京地方裁判所平成23年5月17日判決は、加害車両が被害車両の後ろから追突し、被害車両に同乗していた被害者が頸椎椎間板ヘルニアを発症した事案ですが、裁判所は、事故は激しいものではなかったことから、事故によって椎間板を後方に脱出させるほどの強い外力が加わったとは考えにくいとして因果関係を否定しています。

 なお、事故後の画像上、変性のみられる椎間が限定されている場合は、事故との因果関係が認められやすくなります。