相続が発生した場合、遺産の中に不動産があるケースはよく見られますが、その不動産が第三者へ賃貸中で、相続発生後遺産分割がなされるまでの間も日々賃料が発生している場合には、注意を要します。

 相続開始後、遺産分割がなされるまでの間、不動産の所有権自体は、共同相続人の共有となるのですが、その間に発生した不動産賃料については、取扱いが異なります。賃料については、賃料が発生した段階で、共同相続人がその相続持分に応じて分割単独債権として確定的に取得してしまうのです(最高裁平成17年9月8日判決)。これは、後の遺産分割によって、賃貸不動産の所有権が一人の相続人に帰属した場合も同じです。例えば、賃料債権10万円が発生した時点で、いずれも同じ相続持分を有する共同相続人A、Bがいたら、その時点でA、Bそれぞれが5万円ずつ賃料債権を取得することになります。

 実際には、遺産分割までの間、共同相続人の1人が、借主に対し、賃料全額を請求して、まとめて賃料を管理しているケースも多いかと思われますが、以上のように、賃料債権については、発生時点で各共同相続人が相続持分に応じて確定的に取得しますから、賃料を受け取っていない共同相続人は、賃料を管理している共同相続人へ請求することができます。

弁護士 森 惇一