皆様こんにちは。弁護士法人ALG 弁護士の菊田です。

今回は、相続人が、被相続人が生きている間に、無断で被相続人の財産を処分してしまった場合について、具体的な事例を交えてお話しさせて頂きます。

被相続人が高齢であって判断能力が衰えているために、相続人が被相続人に無断で財産を処分してしまうことは、それが被相続人のためを思ってか、あるいは自分の利益のためかはさておき、ままあることではないかと思います。

この場合、処分行為は当然無効であると考えられそうですが、他方で、被相続人が亡くなった場合は、後付けとはいえ相続人に権利が移転するので、無効とすべきでないようにも思います。このような場合、法的にはどのような解決が図られるのでしょうか。

事例

私の父が先日亡くなったので、遺産の整理をしていたら、父が生前所有していた不動産を、私の兄が勝手に父の代理人と称してその不動産を売却していたことが発覚しました。なお、相続人は、私と兄の2人だけです。

私は買主から不動産を返してもらいたいと考えているのですが、可能でしょうか。

結論

この事案においては、買主から不動産を返してもらうことは可能と考えられます。

不動産の売買契約については、当時の所有権者であった父の承諾を得ていないので、原則としてこの契約によって所有権は移転しません。

もっとも、その後、売主である兄が不動産の所有権を相続したため、兄は不動産を売却する権利を有するに至っています。この場合、例外として所有権を買主に移転させてもいいように思います。

しかしながら、相談者も相続人として所有権を取得している以上、ここで所有権を移転させてしまうことは、相談者の権利が自分のあずかり知らないところで害されてしまいます。このような結論は公平性を欠きます。

そのため、判例上、こういったケースでは、所有権は、相続人全員の追認(ここでは、売買契約による所有権移転を認めることをいいます。)がない限りは移転しないとされています(最高裁平成5年1月21日判決)。

なお、このケースと異なり、相続人が兄1人であった場合は、自分で行った売買契約であり、他に権利を害される相続人もいないことから、所有権は有効に買主に移転するものとされています(最高裁昭和40年6月18日判決)。

このように、基本的には、財産の処分行為を有効とすることによって他の相続人の権利が害されないか、という観点から考えることにはなります。

いずれにせよ、もし被相続人のためを思ってやったのだとしても、後々トラブルになる可能性が高い行為であることは肝に銘じておくべきといえます。

なお、相続人が、まだ生きている被相続人のために財産を処分することは、きちんと代理権を授与される、あるいは後見人となる等の方法によって、適法に行うことが可能です。
もし、財産管理等でお悩みであればお気軽に弁護士法人ALGに御相談下さい。

調査のご依頼は、東京探偵社AI