次のような法律相談・・・

父が先日死亡し、その相続人は妻である母、子である兄と私の三人のみです。私は父から7年前に商売の初期投資の費用として2000万円の贈与を受け、父は3年前に全財産を兄に譲るという内容の遺言書を作りました。その父の遺産の総額は2億円で、債務は4000万円です。なお、父は兄夫婦の療養看護を受けていました。
母や私は、父の遺産を何も相続することはできないのですか。

このような相談があった場合、私はまず、『被相続人(亡くなった方:父)の妻である母や被相続人の子であるあなたは「遺留分権利者」ですので、遺留分減殺請求を行うことにより、遺留分の限度で相続財産を取り戻すことができます』と答えます。

小難しい言葉が出てきましたね。
それでは、遺留分とは何でしょうか。

(1)遺留分とは?

遺留分とは、ⅰ)一定の相続人のために、相続に際して、ⅱ)法律上取得することを保障されているⅲ)相続財産の一定の割合のことです。そして、遺留分は被相続人がその生前に贈与していたり、遺贈していたりしても、奪われることのないものです。

ⅰ)について

遺留分は、「一定の相続人」のみ有しています。それは、法定相続人のうち兄弟姉妹を除く者、すなわち①配偶者、②子、③直系尊属です。
第三順位の相続人である、兄弟姉妹には、遺留分が認められていないことが重要です。

ⅱ)について

遺留分は、「法律上取得することを保障されている」相続財産の一定の割合のことです。
これについては細かい議論がありますので、また別の機会に続編として書きます。

ⅲ)について

遺留分は、「相続財産の一定の割合」のことです。この割合というのは、直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1、その他の場合は被相続人の財産の2分の1とされています。

具体的に言うと、相続人として被相続人の親のみしか存在していない場合は、遺留分は相続財産の3分の1となりますが、それ以外の場合(相続人が子だけとか配偶者と被相続人の親など)は、相続財産の2分の1となります。

(2)遺留分減殺請求の行使

絶対忘れてはいけないこと!!!

遺留分減殺請求は、遺留分権利者が、自分のために相続が開始したことと遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年以内に行わなければ時効によって消滅しますから、絶対に放置してはいけません(相続開始から10年経過すれば、事情のいかんを問わず減殺請求権を行使することはできません。)。

遺留分減殺請求権は、必ずしも訴える必要があるわけではなく、相手方に対して遺留分の請求をする意思表示をすれば足ります。

ただし、「遺留分の請求をします!!」と宣言するだけでは、言った言わないの問題になりますので、1年という期間制限もあるため、内容証明郵便によって受遺者や受贈者等に通知してください。

(3)遺留分の争い方

上記のようにあなたが兄に遺留分を請求して、兄がすぐに支払ってくれるならば何も問題はありません。しかし、多くの場合、遺留分減殺の金額が争われます。

その場合は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に遺留分減殺請求の調停を申し立てることになります(※調停を申し立てただけでは遺留分減殺請求権を行使したことにはなりませんので、注意が必要です)。

さらに、調停不成立となれば(審判事項ではないので)地方裁判所に遺留分減殺請求の民事裁判を起こすことになります。

遺留分はその他にも法律上・手続上難しい問題をはらんでいますので、遺留分の細かい問題については、折を見て続編を書こうと思います。(そのために今回のブログをわざわざ「第1回」と銘打ちました。)
お楽しみに!