この度、相続税法が大きく改正されました。
今回の改正法が適用になるのは、平成27年1月1日以降の相続についてですが、今回の改正はかなりの方に影響がある可能性の高い大きな改正ですので、適用が始まるまでにしっかりと把握しておく必要があると思います。
「相続税」なんてお金持ちの家族に関係すること、うちは一般サラリーマン家庭だから関係ないわ、と思われている方も多いかもしれません。
確かに、これまでは相続税の申告が必要なケースは、4%程度(100件に4件)でした。ところが、今回の改正によってこの割合が約6%に上昇すると言われています。今までより相続税の申告が必要な人が大幅に増えるということです。
その理由は、「基礎控除」の大幅な縮小にあります。
これまで、遺産のうち、5000万円+法定相続人の数×1000万円までは、「基礎控除」と言って、相続税の申告が不要な範囲でした。
つまり、父親が亡くなり、母親、2人の子供が法定相続人である場合、
5000万円+3×1000万円=8000万円までは申告が不要だったのです。これだと、一見して「うちはそんなにないから絶対大丈夫!」という方も多いでしょう。
ところが、この度の改正法では、この基礎控除を、
3000万円+法定相続人の数×600万円としました。
つまり、上の家族の場合、
3000万円+3×600万円=4800万円となります。
これだと、預貯金1500万円、自宅の土地建物の価値3500万円という家庭でも申告が必要ということになります。一気に身近な問題になりましたね。
その他、税率もこれまでの6段階からより細かく8段階になりました。これによって、遺産が2億円以上の高額な場合、税額が5パーセント程度引き上げられることになります。
その代わり、面白いものとして、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」という制度ができました。
子どもや孫の教育資金のために両親、祖父母がお金を残してあげたい場合、なんと1500万円まで非課税で贈与できるという制度です。信託制度を利用し、口座を開設するなど手続きや利用方法などにある程度の制約はありますが、お金持ちのおじいちゃんの相続税を減らし、孫のための教育資金は安泰!というすごいシステムです。
相続税対策として、是非利用してほしい制度だと思います。
弁護士 井上真理