遺言書を作成するとき、専門家に作成を相談したいけれど、どのような専門家に相談すべきか悩まれる方もいらっしゃると思います。遺言書の作成に関する専門家としては、弁護士、司法書士、税理士などが考えられますが、どの専門家に相談するのがよいのでしょうか。

遺言書は、被相続人の方が自らの意思を反映し、残された家族が平穏に遺産分割できるように作成するものです。

しかしながら、せっかく遺言書が作られたにもかかわらず、遺言書の方式を満たさない場合、遺留分を侵害する場合、遺言の内容が曖昧で解釈の余地がある場合等、遺言書の作成のされ方により、かえって、相続争いを引き起こす可能性もあります。

また、相続と聞けば、まず頭に真っ先に浮かぶのが相続税でしょう。

そのため、相続の相談者として、税理士の方にまず相談される方が多いと思います。

確かに、相続税というのは、残された遺族にとって頭を悩ませる事情です。

しかしながら、相続によって起こりうる紛争と相続税の支払いは全く異なります。

一般に税理士は、相続税に関しては精通されていますが、法律について疎い場合が多く、将来どのような点で相続争いが生じるのか、遺言書に何を記載し、何を記載すべきではないのか等理解されていない場合があります。

税理士は相続税に関しての興味が強く、遺産の分割方法についてあまり関心がないと思います。また、相続についての法律・判例の知識が必ずしも十分とは言えません。

遺言書を作成するときは、可能な限り相続紛争に発展するリスクを抑える内容を考えるとともに、将来紛争となる可能性、紛争となった場合のリスク、必要な手続き、見通しなどについても理解しておくことが必要です。

司法書士は、登記の専門家であり、不動産がある場合などの遺言書の作成の相談は受けられますが、登記がない場合、遺言書の作成の相談はできません。

司法書士が作成した遺言書を見せてもらうと、不動産についてのみ分割方法記載され、その他の遺産について全く触れられてもいないというものも見たことがあります。

仮に、「長男にA不動産を相続させる」という遺言書があり、その他の財産について全く記載されていない場合、その他の財産について、相続人間でどのように分けるか争いになるのは必至です。

長男は、その他の財産について記載がない以上、その他の財産は法定相続分にしたがい分けるべきだと思うでしょう。一方、長男以外の人は、長男はA不動産をもらっているのだから、その他の財産を相続する権利はないと思うでしょう。

すなわち、遺言書については、遺産全体をどのように分割しどのように遺言書を作成しなければならないかを検討する必要があります。

弁護士は法律の専門家であり、遺言者の意向を尊重しながら、専門的知識、経験に基づき、将来の紛争を防ぐために有効な方法で遺言書を作成することができます。また、弁護士は、日常の業務から税理士・司法書士と連携して業務をすることが多々あるので、税金や登記についても精通しています。

法律・税務・登記全体を把握し、将来紛争に発展する可能性、その際の見通しを示すことができる専門家は弁護士だけです。

弁護士に依頼することで、将来の紛争のリスクを減らし、紛争になった場合にも、法律に則った適正な解決が期待できます。安心して最後の意思を残すために、遺言書の作成はぜひ弁護士にご相談ください。