Q: 私(X:被相続人)には、妻(A)と、子(B)の他、内縁の妻(Y)がおります。内縁の妻には相続権はないと聞いていますが、Aと私は折り合い悪く、ここ数年はYが私の面倒をみてくれているので、何とかYに財産を遺してあげたいと考えています。何か良い方法はないでしょうか。
A: 内縁関係は、法律上の定めこそないものの、「婚姻に準ずる関係」として、一定の法的保護が与えられています(設問は重婚的内縁関係であるため、一方的破棄等の慰謝料についても“当然に”とはいえないでしょうが)。
いずれにせよ、内縁関係では、「配偶者」としての相続権はありません。
そのため、内縁関係のままYに財産を遺すにあたっては、①生前贈与、②遺贈、③死因贈与等の方法によることになるでしょう。
1.税金の点について
(1)①の場合、税金の点が特に問題となります。基礎控除(110万円×受贈者/年)を超える金額を贈与するにあたっては、贈与税がかかるためです。課税価格(基礎控除を超える金額)あたりの贈与税のパーセンテージは金額によって異なり、金額が多ければ多いほど税率も高くなっています。
そして、基礎控除の金額、税率、課税価格に応じた控除額のいずれにおいても、贈与税は相続税よりも厳しくなっているのです。
(2)平成27年1月以降、金額4000万円、受贈者数(法定相続人数)一名、特例贈与財産でないことを前提に例に挙げておきます。
- 相続税では基礎控除3600万円(3000万円+600万円×法定相続人数)を差し引いた残額400万円が課税金額となり、これに対する税率は10%、支払うべき金額は40万円ということになります。
- 贈与税の場合、上記基礎控除を差し引いた課税価格は3890万円、これに対する贈与税率は55%であり、ここから控除金額400万円を差し引いた金額の1739万5000円を支払うことになります。
これは一度の贈与で4000万円を渡そうとした場合ですので、毎年順次贈与し、年度ごとの金額を抑えることで支払うべき税金の額を抑えることも検討されるところですが、贈与者が明日をも知れぬ身の場合、そんな悠長な事は言っていられません。
(3)この点、②、③は贈与税ではなく、相続税にて算定されます(対象が不動産の場合、特定遺贈、死因贈与では不動産取得税もかかります)。
2.その他の問題点
①の場合、贈与者が生前の時点で財産を渡すことから、死亡前に内縁関係が破綻に至った場合等に取り返しがつかないということにもなりかねません。念のため、負担付贈与としておく等の工夫は必要かもしれません。
②では、遺言書の有効性が、③では当該死因贈与契約の有効性が争いになることも想定されます。①②③のいずれにおいても、遺留分には配慮すべきでしょう。
なお、債務超過明白な状態において、第三者に対し、資産だけを生前贈与や特定遺贈し、財産だけを移そうとすることは、詐害行為として、債権者から取消請求がなされるおそれがあります。
以上のように、相続の場面では様々な面に考慮する必要がございます。判断に迷った際は、弁護士・税理士等の専門家に早めに相談することをお勧めいたします。