当ブログは、いつもわりと深いテーマについての記事が多いですので、これまでに引き続き今回も、相続が全く分からない方向けに基本的な知識をQ&A方式で解説致します。他の記事を読まれる前に、是非ご一読下さい。
前回までの記事はこちら:はじめて学ぶ相続(前編)、はじめて学ぶ相続(中編)
Q8: 遺産分割をしましたが、その後に相続人の誰も知らなかった遺言書が出てきました。遺産分割は無効ですか。
A: 一定の場合、遺産分割が無効となる可能性があります。
(解説)
その遺言の存在や内容を相続人が知っていれば、そのような遺産分割をしなかったような場合には、錯誤(民法95条)により無効となる可能性があります。
Q9: 亡くなった父の介護をしていました。その分財産を多く相続できるでしょうか。
A: 介護により「被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした場合」には寄与分が認められ、相続できる財産が増大しますが、他方、親子であれば行うことが通常である介護等については、寄与分として認められません。
(解説)
老親介護をしたので、その分多くの財産を欲しいというご相談はかなり多いです。被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした場合には、寄与分という、貢献した相続人の相続分を増加させる制度があります。しかしながら、親子は、相互に扶養する義務を負っているので、老親介護もその義務の履行の一環であるとして、「被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした」とまでいえず、寄与分に場合がほとんどです。
ただ、被相続人のために、医療費や施設入所費を支出していた場合、継続的に生活費を渡していた場合、一般的な介護を超えて専従的に療養介護を行っていた場合等には、寄与分が認められる可能性がありますので、弁護士へご相談頂ければと思います。
Q10: 亡くなった父と一緒に父所有の家に住んでいましたが、他の相続人から出ていくように言われています。出ていかないといけないのでしょうか。
A: 少なくとも遺産分割が終了するまでは、出ていく必要はありません。
(解説)
ある相続人が被相続人名義の建物に住んでいた場合、他の相続人から「その家を売って、相続分の金を払え。」「無理なら、家を引き渡すなり家賃を払うなりしろ。」等と言われることがあります。しかし、被相続人の生前から同居していた相続人は、原則として、遺産分割が終了するまでの間、無償で建物に住むことができるとする判例があります。
ただ、他の相続人の方にそのような知識をお持ちの方は稀で、取り合ってくれないことも多いので、実際には、弁護士を使って交渉する必要性が高いでしょう。
弁護士 森 惇一