皆様、こんにちは。
1 はじめに
当職の前回ブログ記事では、寄与分の要件についてご紹介しました。
今回は寄与分の要件を前提に、家庭裁判所では寄与分に関わる主張をどのように処理しているのか、東京家庭裁判所における寄与分の案内(※「寄与分の主張を検討する皆様へ」と題する書面案内)を参考に、その類型的な整理の仕方をご紹介します。
2 寄与分の類型
(1) 家事従事型
被相続人が行っていた事業について従事、すなわち労務を提供していた場合を指します。いわゆる「家事手伝い」を指しているわけではありません。
被相続人が家業として、例えば、農業や漁業などを行っていた場合に、その手伝いをしていたりするケースが当てはまり得ます。
ただし、寄与分として認められるには特別の寄与であることや無償であること等が求められます。
そのため、実際に提供した労務が簡単なお手伝い程度では「特別」とはまでは言い難く、どのような作業、業務をどのくらいこなしたのか個別具体的に説明する必要があると思われます。東京家裁の考え方によれば、3年程度の継続性やかなりの頻度で労務を提供しているという専従性も求められております。
また、無償といえるかどうかについては、給与が支給されていた場合には、それが幾らなのか、業務の内容と比べて相当に少額であれば認められる余地がありますが、被相続人に生活費の面倒を見てもらっていたりすると、難しくなります。
なお、被相続人の財産の増加又は維持に貢献していなければ、いくら頑張っても寄与分の要件を欠くことになりますので注意が必要です。
(2) 金銭等出資型
これは、例えば、相続人が、被相続人が不動産を購入する際に購入資金を援助してあげたり、家の改修費を捻出してあげたりするケースが該当し得ます。
この類型も特別な寄与であることが求められるので、高額の資金提供であることが必要です。
また、資金提供の引き換えに何かをもらっている、というようなことがなければ無償性は認められ得ると思います。他方で、資金提供が実は貸付である、という位置づけならば、寄与分としては認められません。
上記の不動産のケースのように出資を経て得られた獲得物がある場合はいいのですが、問題は出資した結果、それが被相続人の相続財産の増加又は維持に貢献しているか否かがわかりづらいケースです。
(3) 療養看護型
これは、被相続人を療養看護したというケースです。よく問題にされやすい類型ではないかと思います。
重要な前提として、被相続人は療養看護が必要であったこと、特に近親者による療養介護が必要であったことが求められます。すなわち、単に親族が高齢であったから、家族として面倒を見てあげた、というのでは寄与分の検討はなされないのです。
また、相続人が自ら看護をする必要があり、介護施設に預けて任せていた場合には寄与分は検討されません。
その他の類型と同じく、無償性や継続性、専従性が求められており、東京家裁の考え方によれば、ほとんど対価をもらっていない状態、1年以上継続して看護する必要があります。
看護によって職業看護人にかかる費用を節約できた等の被相続人に対する経済的な貢献(=相続財産の維持)も求められます。
家庭裁判所では、介護保険制度の成立・実施を受けて、特別な寄与といえるだけの看護と評価するための基準として、どのような医療介護を必要としていたのか、すなわち被相続人が要介護度でどの程度の評価を受けていたのかを目安とするようになっております。東京家庭裁判所では要介護度2以上を一つの目安と見ているようです。
(4) 扶養型
これは一言でいえば、一緒に暮らして面倒をみたというケースですが、上記(3)療養看護型と同様、扶養の必要があることを前提に無償で継続的に面倒を見る必要がありますし、相続財産の増加又は維持に貢献しなければ寄与分としては認められません。
(5) 財産管理型
被相続人に代わって財産管理を行ったというケースです。
この類型も単なるお手伝いのレベルを超えた貢献が必要であり、無償で継続的になされる必要があること、相続財産の増加又は維持に貢献することも同様です。
3 最後に
以上は東京家庭裁判所における考え方を参考にしたもので、裁判所がパターン化しているのはわかりやすくするための工夫だと思われますが、寄与分の要件に照らしてみれば、どれもかなり貢献したという実態の説明が求められております。
このような実態の説明を口頭ですべてを伝えることは難しく、東京家庭裁判所では説明用のシートも用意されています。
これは寄与分に該当するのではないか?と思われた場合、家庭裁判所に聞かれてもよいのかもしれませんが、裁判所では飽くまで中立な立場からのご案内になるため、中身の整理に窮するならば、まずは弁護士に相談して入念な準備をなされることをお勧めいたします。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。