こんにちは。
本日は、相続に関する相談の中で比較的多い質問「亡くなった人(被相続人)の介護をずっとしてきたので、相続分を多めにもらいたいんですが、できますか?」について、整理して説明したいと思います。

まず、この様なケースで「多めにもらう」ことができる根拠は、「寄与分」と言います。寄与分というのは、簡単にいうと、相続人の中に被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした人がいるときには、その人は、他の相続人に優先して寄与分を得て、その上、法定相続割合に基づく相続財産も得られるというものです。
冒頭に挙げた質問では、「介護」が「特別の寄与」ということになります。
ただ、もちろん、介護していれば常に寄与分が認められるというものではありません。

まず、被相続人との関係において通常期待される程度を超える特別の寄与である必要があります。これを判断する視点は、介護の必要性があるかどうか、被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超えているか、無償か、継続しているか、専従しているといえるほどかなりの負担をしているか、などです。整った施設に入所している被相続人のところに通って介護しているなら、そもそも介護の必要性があるかどうか疑わしいということになります。被相続人の配偶者であれば扶助協力義務に基づいて介護することが最も期待されるでしょうから、よほど高度な貢献をしなければならないでしょう。介護しているときに被相続人からまとまった金銭をもらっていれば有償性が疑われます。亡くなるまでの数週間程度介護しただけというのでは継続性があるといえないかもしれません。というふうにいろいろと考えられ、相談事例の中には「特別」ではないケースもよくあるのです。

また、寄与によって被相続人の財産を維持又は増加させていなければなりません。介護の例でいえば、その相続人が介護しなければ、介護をヘルパーさんに頼んで報酬を支払わなければならなかったところ、それを免れたという関係が必要です。
そして、「特別な寄与」といえるかどうかは、寄与者がどのような行為をしたかだけではなくて、被相続人の病状やどの程度介護や看護を必要としていたか」と言う点も判断要素になります。

では、寄与分が認められるケースだとしたら、いくらぐらい寄与分として多めにもらえるのでしょうか。この金額の算定には、介護保険の介護報酬基準が使われたりします。介護報酬基準は、要介護度に応じて金額が分けられており、日当数1000円~7500円程度までになっています。もちろん、これが100%の割合で認められるわけではなく、そのうちの60~80%程度が認められることになるのですが、期間が長期にわたっており、毎日のように介護していれば、意外に高額になります。