今回は、離婚の際にはもちろん、離婚後でもしばしば大きな問題となり、争われることが多い親権者の指定・変更について、少し説明してみることにします。

 まず、子供のいる夫婦が離婚する場合には、夫か妻のいずれか一方を親権者と定めなければなりません。
 父母の婚姻期間中は、両者が共同で親権を持ちます(民法818条3項)。これは、父母が夫婦である間は、互いに同居し、扶助し合わなければならないということもあり(民法752条)、両者の子を共同親権の下に置くのが妥当との考えが根底にあるものと思われます。ところが、父母が離婚すると、同居義務もなければ、相互扶助義務もないので、当然、両者は別々の場所でそれぞれ干渉しない生活を送るはずです。

 とすれば、互いに別個独立の生活をしている父母を共同親権者としたりしたら、子の財産管理や様々な行為の代理が不便極まりないことになってしまいます。それゆえ、父母離婚時には、法は、子を何れかの親の単独親権に服させるようにしたのです。

 ただ、このように言うと、以前、「内縁1」のところで触れたように、内縁は、社会通念上、夫婦同様の生活を営んでいる男女について認められるもので、婚姻に準じて考えられている(準婚理論)との立場から、内縁にも共同親権の原則を適用させるべきと思えてきます。

 しかし、現行制度は、そうなってはいません。法律上、籍を入れていない男女に子供ができた場合、男がその子を認知しなければ、法律上、父子関係すら生じませんが、認知して父子関係が生じたとしても、原則として母に親権があります(民法819条4項)。父母の協議により、父を親権者と定めることもできるにすぎません(同条同項)。

 ただ、いずれにせよ、単独親権としてしか親権者を定めることはできず、いかに内縁が夫婦同然であり、父母の同居生活が営まれていたとしても、婚姻しない限り、双方を親権者と定めることは許されていないのです。

 また、妻に子供ができても、生まれてくる前に離婚したような場合、生まれた子の親権は自動的に母となります(民法819条3項本文)。もっとも、生後、父母の協議で父を親権者と定めることはできます(同条同項ただし書)。

 なお、親権の変更については、回を改めて述べたいと思いますが、親権の変更は、単独親権だから起こりうる概念だということは、押さえておいてください。すなわち、子が共同親権に服している状態であれば、親権変更の余地はないのです。共同親権なら、父母双方が親権を持っているのだから、そもそも親権変更の要求自体がありえないのではと思うかもしれません。しかし、この親権は、血の繋がった実親だけでなく、養親にも認められうるということがあるのです。

 例えば、夫が離婚時、子の親権者となった後、再婚して、子と後妻との間に養子縁組を成立させた場合、その子は実親と養親の共同親権に服することになります。かような場合、別れた前妻が親権変更を申し立てようとしても、門前払いを食らうわけです。こういったことがあるため、親権変更を回避する目的で子と後妻の養子縁組がなされる恐れがあるとして、父の親権停止及び親権代行者選任を申し立てることもできますし(家事審判規則74条1項)、実際、これが認められた事例もあります(金沢家審昭和58年4月22日)。