皆様、こんにちは。

1 イントロ

 当法人の長谷川弁護士が先日掲載したブログ記事で、中国ではサイバー夫婦が増加し離婚原因にまでなったという話が紹介されました。長谷川弁護士は同記事でゲームのキャラクターに熱を上げてしまったらどうなるのか、と問題提起をされていました。

 個人的な感想ですが、ゲームやアニメでも離婚原因のきっかけになる可能性は秘めていると思いました。

 日本では「○○は俺の嫁」というネットスラングの類が数年前から定着しているようです。○○の部分には好きなアニメやゲームのキャラクター名が入ります。キャラクターに対する好意を示す表現の一つだと思われますので、常識的に考えれば本気で結婚したいと思っている方は僅少でしょう。

 ただ、本人の認識とは離れたところで、奥さんが誤解して夫婦の溝を深めていく可能性は否定できません。日本のように多様なサブカルチャーが存在しながら、それらに対して比較的寛容な風土を持つ国ならまだしも、精神的浮気を認めるというある意味男女関係に厳格な雰囲気の国においては、ゲーム等に入れ込みすぎたのが原因で離婚、なんて記事がそのうち紙面を飾ることがあるのではないか思いました。

 前置きが長くなりました。今回は、男女の認識のズレに着目して、離婚原因の主張として挙げられる「性格の不一致」の主張が離婚原因を認めるには難しいとされる理由について考えてみたいと思います。

2 すれ違う男女の会話

 (1)夫婦は男女の違いあるけれども、同じ人なんだからお互いの考えることは概ねわかるはずである、という前提に普通は立つのではないかと思います。

 もっとも、男女で考えていること、特に相手に望んでいることは思いの外わかりづらいようにも思えます。

 (2) 例えば、夫婦の会話で夫が仕事での愚痴を言うのと、妻が愚痴を言うのでは相手に求めていることが違うことがあり得ます。

 基本的にはお互いに嫌な思いをしたことを相手にわかってもらうことを望んでいます。しかし、女性は本当にパートナーに自分の辛かった気持ちをわかってくれるだけで充分だったりします。ところが、夫は妻から問題解決を求められたと早合点して、こうしたらいい、ああしたらいいと建設的なコメントをしようと努めます。

 しかし、妻は理解を示してくれるだけでいいので、夫の介入は正直どうでもいいのです。夫にしてみれば、妻は助けを求めているのに自分の助言は全然聞き入れないので、妻の振る舞いは意味がわからないとしまいには怒り出すこともありうるでしょう。

 (3)でも、逆に夫が妻に誤解を与えている場面もあり得ます。

 例えば、夫が職場でタフな仕事や悩み等を抱えている時、妻は夫の身を案じて「どうしたの?」「大丈夫?」等と声をかけたりします。ところが、夫の返事は決まって「別に。」「何にもないよ。」ととりつく島がない。世の奥様方はこんなふうに応じられた経験はないでしょうか?

 夫としては自分で何とかするから妻には大人しく待っていて欲しいと思っているのだそうです。私は思春期のころに親に対してですが、過度に心配されたときに似たような感情を抱いたことがありました。しかし、妻は夫の支えになりたい、ひいては夫に必要と存在でありたいと望んでいるので、夫に素っ気なくされると自分は要らないと思われているだろうか等と不安に襲われ、時に傷つくようです。

3 最後に

 (1)今回紹介した例は夫婦間によく見られそうな些細なすれ違いでした。些細なうちはいいですが、すれ違いが積み重なると夫(妻)の発言に対して、自分なりの評価が加わるようになると、お互いを誤解したまま次第に夫婦間の溝が深まって、「あいつとは合わない。」「あの人にはついて行けない。」という気持ちに向かう可能性があります。

 しかしながら、「子はかすがい」等とも言われるように、男女の仲が終わったことが婚姻関係の破綻と同義になるとは限りません。男女は得てしてすれ違いやすいものだという前提に立てば、いちいち性格の不一致の経緯を詳しく聞いて離婚を認めていたらキリがありません。精神的な結びつきが希薄になっても、共同生活を維持しているのであれば、婚姻関係自体の破綻とまではいえないのです。

 裁判所もそんな夫婦の摂理(?)を知ってか知らないでか、判決を考えるにあたっては、漫然と性格の不一致を主張するだけでは離婚原因の主張としては不十分とする姿勢をみせています。ただ、訴訟や調停の場合、当事者双方が主張合戦を繰り返すうちに、裁判官や調停委員から「婚姻関係の修復は無理そうですね。」と離婚を前提とした和解を進められたりすることもあります。

 (2)今回参考にしたのは「ベスト・パートナーとなるために」(三笠書房、著:ジョングレイ、訳:大島渚)という書籍です。「男女は違う星からやってきた」というフレーズが大変印象的でした。

 二次元にも三次元にもお嫁さんのいない私にとってはピンと来ない箇所もありましたが、知り合いの既婚者等に文中の具体例を説明してみると「あるある」という反応が得られたので、円満にみえる夫婦といえども何もかもが上手くいくわけではないのだなと思いました。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。