先日の台風9号が過ぎ、少し暑さが和らいだ気がしますね。
 さて、前回は、子ども手当と養育費の関係について説明しました。今回は、特別児童扶養手当というものと、養育費・婚姻費用との関係についご説明します。

 特別児童扶養手当というのは、特別児童扶養手当等の支給に関する法律(昭和39年法律第134号)という法律に基づいて、障害児を監護するその父又は母等に対して支給される公的扶助としての国の手当のことです(同法3条1項、2項参照)。受給資格の認定を受け、所定の手続の下に同手当の支給を受けることができます。
 このように、障害児を監護するための手当、費用ですから、養育費等と同じような趣旨とも考えられるため、算定に当たって、考慮すべきかどうかが問題となります。

 この点について、東京高等裁判所平成21年4月21日決定・家庭裁判月報62巻6号69頁は、

「(特別児童扶養)手当の支給を受けた者は、障害児の生活の向上に寄与するために支給されるものであるとの趣旨に従って用いる義務を負うものの(同法3条5項)、これを保管費消することができるとともに、他方の配偶者が同手当の支給を受けた父又は母に対しその引渡しや支払を当然に請求することができるとは解されないから、民法760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担に関する処分(家事審判法9条1項乙類3号)として、その受給を受けた父又は母に対し、他方の配偶者に対する引渡しや支払を命ずることはできないものと解される。」

と判断しました。

 簡単に説明すると、特別児童扶養手当は、障害児の生活向上のために支給されるものであるけれど、一旦受け取ってしまえば、これをどのように使うかは受給者が自由に決めることができるし、他の配偶者が当然に支払いを請求できるということにもならないので、養育費等の算定に当たっては、特別児童扶養手当を考慮することはできないということです。

 ただ、誤解をおそれずに言うと、受給者は父親で、子どもの監護は母親が行っていることが多いと思いますので、何で、監護していない者が受給できることになり、監護している者は受給できないのだ、障害児の生活向上という目的に反するのではないか、とも思われます。

 しかし、これは、受給すべき者が受給しているのか否かという問題であり、婚姻費用や養育費の問題ではないということだと思われます。現行の法律、実務で変更が認められるか否かは何とも言えませんが、障害児の監護をしているのは母親のみであり、父親は監護していないとして、受給権が母親にあると主張し、変更を求めるしか道はないのかもしれませんね。

弁護士 松木隆佳