8月23日はこよみ上、「処暑」でした。暑さが峠を越えて和らぎ始めるころというような意味であったかと思います。私には峠を越したように全く感じられません。今年の夏は特に暑いですね。
さて、今回は、養育費を定めたのち、再婚したら養育費はもらえなくなるのですか?という質問を受けたことがありますので、この点についてご説明したいと思います。
これについては、養育費がなぜもらえるのか、という点から見ていきましょう。
根拠は民法877条1項にあります。「直系血族…は、互いに扶養をする義務がある。」と規定されています。誤解をおそれずに簡単に言いますと、父親、母親は子どもを扶養する義務があるということを含みます。
「父親」である限り、扶養する義務があるわけです。たとえ、母親が別の男性と再婚したとしても、子どもにとって「父親」であることには変わりませんから、「父親」が養育費を支払わなくてはならないことには違いがありません。
ですから、答えは、再婚したとしても、養育費はもらえます、ということになります。
このことは、お子さんが母親の再婚した男性の養子になったとしても、養育費がもらえるのは同じです(金額については相違が生じ得ます。)。
では、金額はどうなるでしょうか。
民法880条では、家庭裁判所は、扶養の程度等について協議または審判をしたのちに、事情の変更が生じた時、その協議または審判の変更または取り消しをすることができるとされています。
ただ、一度、協議や審判で決めたことが、簡単に変更できてはたまりません。原則として、協議や審判で決めたことは、そうそう簡単に変更できないものとされています。
そのため、「事情の変更」とは、支払義務者の収入が大幅に減った、支払義務者が失業した、当事者の一方が再婚した、再婚したところ再婚相手に扶養義務を負う子どもがいる、などの場合に限られることと思われます。
再婚した場合には、再婚した側の生活水準が変わるわけですから、養育費の金額は変更された生活水準を基に金額が算定されます。事案によって異なりますので、これにより、養育費が増額するか、減額するか、一概には言えませんが、減額になってしまうことが多いと思います。
なお、再婚したことのみによっては、養育費の額が減額されるものではありません。
減額されるには、父親と母親の双方で協議して定めることになります。話し合いができないときには、家庭裁判所に養育費の減額の調停の申立てができます。調停でも話し合いがまとまらないときは、審判になります。
ですから、再婚したとしても、特に必要がない限り、相手に再婚したことを伝えないようにした方がいいと思います。
弁護士 松木隆佳