前回は、裁判所において、別居中のために子供の監護養育を行っていない夫婦の一方に子供との面接交渉が認められるか否かは、「子供の福祉」に合致するかどうかという基準が用いられるというお話をしました。

 それでは、「子供の福祉」の内容は一体どのようなものなのでしょうか。

 具体的には、次のようなものが考えられます。

① 子供が、面接を求める親に対し委縮、畏怖、嫌悪、拒絶の感情を抱いており、その精神面でマイナスになるか否か
② 夫婦間の離婚調停や離婚訴訟等の紛争が原因で、子供の心身の状況が極めて不安定な状況にあるか否か
③ 両親の対立や反目が激しく、その葛藤が子供に反映して、子供の精神的安定を害するか否か
④ 面接交渉を求める親が、子供や面接交渉を行う側の親に対し暴力を奮っている等子供に悪影響を及ぼすか否か

 ただし、裁判例は、例えば、③の事情に関しては、「両親が親権をめぐって争うときはその対立、反目が激しいのが通常であるから、そのことのみを理由に直ちに面接交渉が許されないとすると、子につき先に監護を開始すればよいということにもなりかねず相当ではなく、」その場合でも、「なお子の福祉に合致した面接の可能性を探る工夫と努力を怠ってはならないというべき」としています(名古屋高裁平成9年1月29日家月49巻6号64頁)。

したがって、単なる夫婦間の紛争の存在だけでは、面接交渉が認められないということにはならないようです。

 では、さらに進んで、調停等の結果、調面接交渉が認められ、その取り決めがなされた後に面接交渉を拒否した場合は、何らかの不利益はあるのでしょうか。

 先ほど述べた子供の福祉に反する特段の事情もないのに、実施しないということになれば、面接交渉権の妨害に至る経緯、期間、面接交渉を実施しない親の態度等によっては、相手からの損害賠償請求を受けることもありうるので、注意が必要です。