皆さんこんにちは。今日のテーマは、「親権と監護権」です。

夫:「親権は僕にするよ。」

妻:「いいわよ。でも、子供は私が連れていくわ。あなたご飯も作れないじゃないの。」

夫:「えっ!親権者は僕だぞ?だったら子供は僕の所にいるんじゃないのかい?」

 さて、この会話をご覧になった皆さん、最後の夫の言い分は法的に正しいでしょうか?

実は、必ずしも、「親権者である」=「子供を現に養育している」というわけではないのです(大多数は、親権者が子供を養育していますが。)。なので、最後の夫の言い分は、法的に正しくはないのです。

 親権の内容は、①子供の監護教育の権利義務、②子供の財産上の管理処分の権利義務に分かれます。子供を現に養育するというのは①の内容です(監護権)。②は、未成年者は、固有の財産(祖父母から土地を贈与される等)を管理処分する能力がないため、これを親がかわりに行うというものです。子供の預貯金の管理も②にあたります。

 実は、親権のうち、①だけを取り出して、夫婦の一方を親権者、もう一方を監護権者とすることができるのです(上記会話の妻の言い分をご参照ください。)。

 確かに、親権者が子供を連れていき、養育を行うというのが通常ではあります。しかし、親権についての争点を解決するうえで、子供を手元においてくことが至上命題で、「親権者」という肩書にこだわっているわけではない場合、親権者と監護権者を分けるという手段を採りえます。ただ、協議離婚の場合、離婚届には親権者を書く欄はありますが、監護権者を書く欄はありませんので、後の紛争予防のために別途示談書や公正証書で明記しておくことをおすすめします。

弁護士 上辻遥