よくある相談で、養育費の支払義務者が、無職になって収入がなくなってしまったため、養育費が支払えない、ということがあります。

 この類の相談は、義務者・権利者双方からきます。

 義務者からしてみたら、「払えない」、一方権利者からしてみたら、「払えないじゃ済まされない」でしょう。ではこのような場合、裁判所ではどのような判断がなされるのでしょうか。

 ただ、収入がなくなるにも事情が種々ありますので、場合を分けて考える必ようがあります。ここでのキーワードは、「稼働能力」です。

 例えば、無職になった理由が、「かったるいから辞めた」では、稼働能力ありとして、賃金センサスによる平均賃金、或いは退職前の給与を基準に養育費の支払義務が課されるでしょう。

 無職になったから支払わなくていい、などという言い訳は通用しません。

 一方、「病気や怪我で働けなくなった」という場合には、稼働能力の判断が分かれます。極めて重篤な病気になり、誰が見ても働けないと判断できる場合には、稼働能力なしとなることは問題ありません。

 しかし、例えば、うつ等、人によって程度がある場合には、稼働能力の判断は容易ではないでしょう。

 うつの診断書を提出するだけでは、稼働能力なしの立証は難しいかもしれません。

 判断が分かれそうな場合には、証拠等の資料をしっかり揃え、裁判官に対して十分な説得を行う必要があるでしょう。これは、義務者、権利者いずれにも指摘できることです。不安なときは、弁護士に相談されることもおすすめします。

弁護士 吉田公紀