こんにちは。
 今年7月に親子関係不存在の訴訟で最高裁判決が出ましたね。

 今回の判決は、基本的には従来の考え方を踏襲するもので、民法上の嫡出推定、嫡出否認という制度の下に、血縁上の親子関係が客観的にないと証明されている場合であっても親子関係不存在訴訟を提起することはできないという結論でした。

 親子などの法律上の身分関係は、これを基準に親権、養育費や相続など家事に関する法的関係だけでなく、扶養や税金などの社会的なものも含めて、本当に様々な法律関係に大きな影響があることから、当事者の意思のみで簡単に左右できないものとされており、一度形成された関係を否定することは慎重にしなければなりません。

 また、本件のような親子関係についての争いでは、子の身分関係について、本人の意思ではなく、親の意思のみでその身分を左右する場合もあることから、子の福祉(子供にとっての幸福)の視点からも慎重に判断されたのだと思います。

 嫡出推定、嫡出否認、認知等の身分法上の制度と、現代科学によるDNA鑑定や代理出産などの技術との関係や整合性は近年の大きなテーマとなっていますが。いくつもの制度が入り組んで制定されており裁判所の判例だけでは全ての論点を網羅することが難しいため、立法による対応と補完が期待されるところです。

弁護士 井上真理