皆様、こんにちは。

1 イントロ

 当法人のブログでも適宜紹介されているかと存じますが、婚姻費用や養育費を算定するにあたって、お子さんにかかる学費をどのように負担するかが問題となることがあります。

 もっとも、いわゆる算定表による場合、より正確には標準算定方式による場合には、お子さんが公立の学校に通うことを前提として算定されているため、私立の学校に通う場合にかかる学費まではフォローし切っておりません。

 そのため、別途の考慮が必要であると主張する必要が出ますが、具体的にはどのように計算されていくのでしょうか。

 今回は、私立学校に通うお子さんがいるケースでの養育費、婚姻費用の取り扱いについてご紹介します。

2 基本的な考え方

 そもそも、私立の学校に通うことを前提に婚姻費用や養育費を算定しなければならないのか?という問題点が挙げられます。

 すなわち、通常、公立の学校の方が入学金や授業料が安いのだから、お子さんを監護している権利者は、なるべく公立の学校へ通わせるべきであって、むやみに私立の学校に通わせてよいものではない、というような、一見すると選択肢を狭める意地悪な意見のようにも思えます。

 この点については、婚姻費用や養育費の義務者の承諾、夫婦の学歴、職業、収入状況等を勘案して判断されるべきであろうとの指摘があります(判例タイムス1208号30頁参照)。

 そうすると、義務者の承諾があることが前提になりますが、高学歴、高収入であればあるほど個別具体的に学費を負担すべきとの判断になる可能性が高まりそうです。

 ただ、私立校でも色々な学校があると思いますし、公立校も同様だと思います。また、統計的には疑義のあるところかもしれませんが、親の学歴や収入状況にかかわらず勉強の資質に優れているお子さんがいるというケースが皆無ではないと思います。つまり、親の経済的状況は学費の負担の可否を見極める上で重要な要素ですが、その他の点は何とも言えないような気がします。極論すれば、親同士が良ければ何でもよいのですが、必ずしもそうでない場合には、お子さんがその私立の学校に通う必要があるのか?という観点も吟味されてもいいように思います。

3 負担の方法

 それでは、具体的にはどのように学費の負担を調整するでしょうか?

 義務者が学費全部を負担するのか、学費の半分など一定の割合を負担する按分の定めを取り入れるのか、標準算定方式によって算出された金額のうち学費分の不足を足すのか、色々な考え方があるようです。

 標準算定方式を修正する方法ですと、同方式によって算出される婚姻費用や養育費のうちの教育費分を算出し、学費からその教育費分の差額を加算する形で計算したりします。

 授業料以外の費用についても負担しなければならないか否かについては、ケースバイケースとされています。例えば、塾代も議論に上がることがあるようですが、進級、進学のために本当に必要なのか吟味されることになります。おそらく、親心としてこのくらい学校にはいかせてやりたい、そのためには塾でこのくらいは勉強させなくちゃ、という考え(主張)は、特に家庭裁判所では必ずしも通るわけではないだろうと覚悟しておいた方がよいでしょう。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。