相談者や依頼者の方から、「養育費を一括で支払う合意をしたいのですが、可能ですか?」と質問されることがあります。

 養育費の一括支給については、将来にわたる養育費を予測することは困難であることなどから、余程の事情がない限りこれを1度に支払うことを命ずべきではないという裁判例がありますが(東京高決昭和31年6月26日)、扶養義務者・権利者双方が一括支給を希望する場合や一括支給を認めるべき特殊な事情のある場合であれば、これを否定する理由はないと考えられます。

 養育費を一括で支払う合意をする場合のリスクとしては、一括支給後に、扶養権利者の経済状況の変動や子の進学等、事情の変更によって要扶養状態になったとして、養育費を追加で請求される可能性があるということがあげられます。

 このようなリスクを少しでも減らすために、養育費を一括で支払う合意をする際には、当該養育費の対象期間を明確にしておく必要があります。

 なお、当然のことですが、養育費の一括支給を受けた扶養権利者は、当該養育費を計画的に使用する義務を負うので、浪費や計画外の使用により養育費を費消して要扶養状態に陥ったとしても、一括支給により扶養される期間は、事情の変更があったとして再び養育費の支払いを請求できることはできないと考えられています(東京高決平成10年4月6日等)。

 養育費の一括支給の合意をしたいと考えていらっしゃる方は、合意書を作成する前に、是非弁護士にご相談ください。