養育費とは、未成熟子が経済的に自立した社会人として成長するまでに要するすべての費用をいいます。
離婚の際、毎月~万円を支払うというような合意を夫婦間で取り決めておくことが通常です。たいていは、「○○(義務者)は、○○(権利者)に対し、長男及び次男の養育費として、平成26年4月からそれぞれ満20歳に達する日の属する月まで、1か月金○万円を、毎月末日かぎり、○○に振り込む方法により支払う。」のような合意がなされます。もちろん、当事者間の合意を必要としない審判や裁判においてもこのように定められることがあります。
いずれにせよ、このような取り決めがなされた以上、原則として支払義務者は、定められた期間、定められた額を権利者に支払い続けなければなりません。
しかし、このような取り決め後に生じた事情如何によっては、支払額を減額すべき場合もあります。
その典型例として、支払義務者が再婚し、再婚相手との間に子が生まれた場合があります。
このケースについては、権利者側あるいは一般人の感覚からすると、「再婚したのも子供を産んだのも、義務者側が勝手にしたことであって、一方的に減額されるいわれはない!」と感じられるかもしれません。
しかし、そもそも養育費支払義務は、生活保持義務(民法766条1項)といわれ、これは、自分の生活を保持するのと同程度の生活を子にも保持させる義務です。例えば、食べ物がパン1個しかなかったら、少なくともその半分を子に与えなければならないのです。自分の生活を犠牲にしない限度で最低限の生活扶助を行う生活扶助義務とは異なります。
したがって、再婚相手との間に子が生まれた場合には、当然義務者はその子に対して生活保持義務を負っている以上、上記の例でいえば、1個しかないパンでもこれをちぎって与えなければなりません。そして、再婚相手との間の子と前妻との間の子とでは義務者の負う生活保持義務の程度に差などはないのですから、1個のパンをそれぞれに均等に分けることになるのです。
そうすると、当然前妻との間の子の取り分は少なくなります。
このような理屈で、再婚相手との間に子が生まれた事は、養育費の減額事由となり得ます。
ただ、これは、義務者が再婚し子が生まれる事を養育費の取り決め時に予見できなかったことが前提です。
また、再婚相手に相当の収入がある場合には妥当しない可能性があります。そのような判断を下す審判例(福島家会津若松支審平19.11.9家月60.6.62)もあります。
このような点には注意が必要です。
弁護士 吉田公紀