夫婦の婚姻破綻の原因が、専ら当該配偶者にある場合に、当該配偶者は有責配偶者と言われます。通常の離婚請求の認容に必要とされる要件は、770条1項各号に掲げられる事由が認められることであり、最も多いのが、同条項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」があることです。夫婦の婚姻関係が破綻して回復の見込みがないといえるだけの事実を主張し、認められれば離婚請求は認容されます。
しかし、有責配偶者からの離婚請求には、婚姻関係の破綻に加えて、一般的に次のような要件が必要と考えられています。
① 夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
② 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて過酷な状況に置かれる等離婚請求を認容することが社会的正義に反するといえるような特段の事情の認められないこと
③ 未成熟子の不存在ただ、これらの要件は、要件ごとに個別に判断をするというよりかは、結局はこの有責配偶者からの離婚請求を認めることが信義則に反するか否かという観点から判断されています。
①別居期間については、同居約22年、別居6年の事案で離婚請求を認めている裁判例があります。この裁判例は、他の例に比べても群を抜いて短い別居期間といえるでしょう。ただ、この事案は、有責配偶者だけでなく、その一方配偶者にも婚姻破綻に相当な責任があると判断されたという特殊事情がありました。双方の有責性の大小も重視されるのです。
②の特段の事情については、とりわけ経済的事情が重視されます。別居期間がある程度長期間であったとしても、その間、全く一方配偶者に対して婚姻費用等の支払もせず放置しておいた等の事情が認められたりすると、離婚は認められないという価値判断になりやすいでしょう。
③については、未成年の子がいるというだけで離婚は認められないわけではありません。裁判例は、未成年の子の年齢も考慮して、総合的にみて離婚請求を認めることが信義則に反するかどうかで判断しています。
有責配偶者としては、別居期間を単に継続していくだけではなく、一方配偶者に対して、誠意をもって経済的な支援を継続していくこと等が、離婚が認められる近道といえるでしょう。
弁護士 吉田公紀