以前にこのブログでも書きましたが、探偵業法は、警察が、探偵業界の実態を把握するために作られた法律です。

 当然、その前提として、探偵に関する苦情が多かったことが挙げられますが、単なる苦情だけなら、警察が本格的な関心を持つはずがありません。

 探偵業法が、探偵業者の監督取締機関を公安委員会、すなわち、警察としているのは、探偵業者がらみの犯罪がけっこうあったからです。

 警察官僚出身で衆議院議員(執筆当時)の葉梨康弘氏の著書「探偵業法 立法までの物語と逐条解説」(立花書房)に、過去の探偵業者犯罪検挙例が挙げられておりましたので、その一部を抜粋して紹介したいと思います。

探偵業者の犯罪検挙例

① 調査会社役員が、NTT社員に合計400数十万円を供与して、顧客に関する1000数百件の個人情報を漏洩させた(NTT法違反)。

② 調査会社経営者が、警察官に現金を供与して、200件以上の犯罪歴を漏示するようそそのかした(国家公務員法違反)。

③ 調査会社経営者が、調査対象者にかかる郵便貯金の記号番号や残高について郵便局員に漏示するようそそのかし、その見返りとして現金105、000円の賄賂を供与した(贈賄罪、国家公務員法違反)。

④ 調査会社の従業員が、調査対象者の居宅に盗聴発信器様のものを取り付け、有線電気通信を妨害した(有線電気通信法違反)。

⑤ 調査会社経営者が、離婚調停中の女性の行動確認を行う目的で、、同女性宅にブロック塀を乗り越えて侵入し、発信器を車両に取り付けた(住居不法侵入)。

⑥ 調査会社の従業員が、離婚調停に伴う調査業務に関し、依頼者の夫に傷害を負わせた(傷害)。

⑦ 調査会社の従業員が、調査依頼人の元交際相手の名誉を毀損するビラを同女宅近隣に配るなどして、その名誉を毀損した(名誉毀損)。

⑧ 調査会社経営者らが、夫の依頼により、離婚調停中で別居している妻が養育している長男を連れ去る目的で、依頼者と共同して、登校途中の長男を強引に自動車内に押し込んで誘拐した(未成年者略取誘拐)。

⑨ 調査会社の従業員が、調査対象者が高級外車を頻繁に購入していることを知り、不正を行っているだろうなどと申し向け、約500万円を喝取しようとした(恐喝未遂)。

⑩ 調査会社の経営者が、金融機関社員が飲酒運転をしていたこと及びテレホンクラブに出入りしていたことを種に、190万円を喝取した(恐喝)。

⑪ 個人経営の調査業者が、学校法人理事長に対し、同校のスキャンダル文書を示し、同人から1000数百万円を喝取しようとした(恐喝未遂)。

⑫ 調査会社経営者が、郵便局において、郵便物保管依頼届出書を偽造して、これを行使した(有印私文書偽造・同行使)。

⑬ 調査会社役員が、高校生の売春事件を調べているとして、女子高校生を呼び出し、同女を強姦した(強姦)。

⑭ 調査業者が、複数の中国人と共謀し、元金融業者宅に押し入り、家族四人を粘着テープ等で緊縛し、傷害を負わせた上で、現金372万円及び貴金属252点を強取した(強盗致傷)。

⑮ 調査業者である暴力団組員が、女性の借金の肩代わりをしたうえで、借金の返済名目で、同女に売春させた(売春防止法違反)。

 どうです。すごいですよね。

 とても全てを紹介できないので一部に過ぎませんが、調査業務に絡むものもあれば、調査業務をきっかけに犯行に及んでいる事件もあります。
 調査業者を名乗っている暴力団員もいるのには驚きました。

 このような事件を見ると、どうやってまともな探偵業者を選んだらよいのか分かりませんね。

 私が離婚の相談者から、「探偵を紹介してください」と頼まれても、「ご自身で探してください」と回答していたのは、こういう事件に巻き込まれるのが嫌だったからです。

 かといって、まともな探偵業者を選別するとっておきの方法があるわけではないので、おかしいと感じたら、すぐに警察に相談することだと思います。

 現在、警察は、探偵業者の取締を強化しているはずですから、親身に相談に乗ってくれると思います。