今日は、調査官を味方につける、というお話をします。
 当ブログにも何度か登場しているように、家庭裁判所には、「調査官」という独特の役割の職員がいます。

 調査官は心理学、社会学などに精通した法律家とは違う専門家で、親権、監護権、面会交流等の争いの際に家庭裁判所の命令を受けて、子の福祉の視点から、家庭、幼稚園や学校、お子様の深層心理、親のこれまでの養育等について詳細な調査をし、報告するのが主な任務です。

 このように、調査官は通常「調査」をするときに登場することが多いのですが、調停などの場合で、親権や監護、面会交流が主要な争点となっているような場合には、調停員と共に3人目の調停の立会人として同席することがあります。

 そして、たとえば離婚の調停において、お子さんの立場を考慮して質問をしたり、お子さんのためという視点で話を進めてくれたりします。

 そこで、調停においては、この調査官を味方につけて話を進めることも非常に大事な要素になってきます。

 調停において登場する調停委員という人たちは、とくに法律家というわけでもなく、事実を決める権限もなく、争う当事者の問題を、なんとか和解できないかと妥協点を探る役割を担う人々なわけですが、この点、調査官は「子どものため」という、独自の視点と、「子の専門家」という強い立場を有している点が調停員とは異なります。

 そこで、一方の当事者が子供のためにならない要求や主張をしている場合などには、「それは子どもにとって負担になりますので、できません!」などと強い意見を言ってくれる時もあります。

 争っている相手から直接拒否されると、感情的に受け入れられないことも、「家庭裁判所の専門家」の人から、「子供の立場」に立って、拒否されてしまうと、諦めざるを得ない場合があるのは、ご理解いただけると思います。調停で話を進めるためのテクニックの一つとして、活用してみてください。

弁護士 井上真理