今回は、認知についてご説明したいと思います。
1 認知とは
認知とは、嫡出でない子を自分の子であると認める法律行為のことをいいます。母親との親子関係は分娩と言う事実から当然発生するため、母親に認知は必要ないと考えられています。したがって、認知は、嫡出でない子の父親との関係でだけ意味を持つ手続ということになります。
2 任意認知と裁判認知
(1)認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって行います(民法781条1項)。これを任意認知といいます。
届出をするだけで効力が生じてしまうため、真実の父でない者が届出をすることによって、虚偽の親子関係が形成されるリスクがあります。
そこで、子、その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができます(民法786条)。これは、訴えによって認知の無効を主張しても良いし、それ以外の手続内で、認知が無効であることを前提とした主張をすることを妨げられないということです。
成年の子を認知しようとする場合は、子の承諾が必要になります(民法782条)。また、父は、母の承諾を得て、胎内にある子を認知することもできます(民法783条1項。いわゆる「胎児認知」)。婚外子になると分かっている状態であれば、胎児認知して(させて)おくことが、後の紛争を招かないという意味で、無難だと思われます。
(2)婚姻関係にない男女の間に子が生まれたものの、父親が任意認知をしない場合に、母親あるいは子が、父親が認知することを求めることを、裁判認知(強制認知)といいます。認知の訴えを提起することにより、強制的に認知させるわけです(民法787条)。
親が生存中はいつまでも認知訴訟を提起できますが、死亡の日から3年が経過すると、訴えを提起できなくなります(民法787条但書)。
3 認知の効果
認知によって、法律上の父子関係が生じ、その効果は出生の時に遡ります(民法784条)。法律上の父子関係が生じるとは、相続権や扶養義務などの法律上の親子としての権利義務が発生するということです。認知後は、親権者を父に変更したり(民法819条4項)、父の氏に変更したりすることが出来ます(民法791条)。また、子は父に対して扶養請求ができます。
弁護士 水野太樹