最近、暑く、寝苦しい日が続きますね。逆にエアコン病などに気をつけたいところです。

 さて、今回は、養育費をいつまで支払わなければならないのか、ということについてみていきたいと思います。

 養育費とは、未成年者が自立をするまでに必要とされる費用のことです。

 養育費の趣旨は次のようなものです。

 離婚により、未成年者の衣食住の費用(生活費等)の分担を、一方の当事者だけが負担していくというのでは、負担が大変です。また、他方の当事者も親権及び監護権を持たなくなっても、民法上、未成年者を扶養する義務を負います。ですから他方の当事者にも養育費を分担させるのが、公平ですし、未成年者からすれば、扶養義務を請求することができるため、養育費というものがあるのです。

 そして、この養育費の金額は、親と同居していたら得られた生活を与えるべきということから、親と同水準の生活を未成年者が送ることができるように金額を定めます。

 このように、養育費は未成年者が成人するまでの生活費を分担するものですから、通常、未成年者が成人(20歳)に達するまで支払うと定めることが多いです。ただ、最近は、当事者の約束で、子どもが22歳に達するまで(大学等を卒業するまで)とすることも増えてきました。むしろ、こちらの方が多いかもしれません。

 では、養育費の支払終期がこのように定められても、予定されていた支払終期より早く支払わなくてよくなることがあるのでしょうか。

 まず、未成年者が死亡してしまった場合です。この場合は、養育する対象がいなくなりますので、支払義務は消滅します。

 では、たとえば、親権者が統合失調症などになり、児童福祉施設に預けられた場合はどうでしょうか。

 「子どもの親権者が統合失調症で、監護能力が無い」ということで、親権者が「事理弁識能力を欠く状況ないし心身に著しい障害があるため親権を行うことが事実上できない状況にある」といえるのであれば、「未成年者に対して親権を行う者がないとき」(民法838条1号前段)に該当すると考えられます(大阪家裁昭和43年12月23日審判、札幌家裁昭和56.3.16審判)。

 すると、児童福祉法47条1項により、「児童福祉施設の長は、入所中の児童で親権を行う者又は未成年後見人のないものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。ただし、民法第797条の規定による縁組の承諾をするには、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の許可を得なければならない。」と定めていますので、当面、児童福祉施設の長に対して養育費支払義務の履行をするということになります。

 ただし、この場合、未成年者を育てていく意思があるのであれば、親権変更の審判をまず受けるべきでしょう。親権者が無事変更できれば、支払義務はなくなります。

弁護士 松木隆佳