夫婦が離婚するにあたって、離婚の条件等について、離婚協議書といった文書で残しておくことは、よくあります。

 夫は、妻に対して、財産分与として〇〇万円支払う。子の親権は、妻とする。夫は、子が20歳になるまで、月〇〇万円の養育費を支払う。夫と子は、月1回、面会交流を行う。などについて、書いておくのです。

 そこで、ふと心配になるのが、今はこれでいいけど、何年か経って、お互いの状況が変わってしまったらどうしよう、ということです。

 例えば、養育費の値段の基準となるのは支払う側の収入ですが、数年後には独立してやっていく予定だから、独立してしばらくはそんな額の養育費払えないかもしれないな、という方もいるかもしれません。

 お互いまだ若いし、自分か相手が再婚した場合は、養育費とかはどうなるのかな、と不安になる人もいるでしょう。

 相手が再婚して、新しいパートナーとの間に子供もいるのに、離婚のときに決めた夏休みのお泊りを続けるのは、子どもが気を使ってしまって可哀想、という場合もあるかもしれません。

 同居していない親と月2回会う、という面会交流の条件を決めたけれど、子どもが大きくなってきて土日も部活や塾で忙しく、月2回の面会が子供の負担となってしまう場合も出てくるでしょう。

 このような色々な可能性を考え、協議書にいろいろな場合を想定して書いておいたほうがいいのではないか、と考えることはよくあるらしく、私たちもそのような相談をよく受けます。しかし、人生は何が起こるかわかりませんから、このような場合を全て想定して、「この場合は、こうする」等と事前に協議書に盛り込んでおくことは、事実上不可能でしょう。

 そこで、協議書においては、事情の変更があった場合には、その時にお互いが誠実に話し合って、新たな条件を決め直す、というように、将来の事情の変更に備えた柔軟な対応が出来るよう、決めておくことが大事です。また、そのときに相手と連絡が取れないのでは困りますから、住所や電話番号などの連絡先の変更があった場合に、お互いにすぐに報告する、ということを決めておくことも重要になってきます。

 また、話し合いがまとまらない場合は一度決めた養育費や面会交流の条件などを変更するための調停を申し立てることも可能です。

弁護士 井上真理