こんにちは。花粉症の辛い季節ですね。
今日は、離婚時以外の氏の変更についてお話します。

 日本において男女が結婚をするときは、夫か妻のどちらかの氏を選択し、離婚をした場合、3カ月以内に届をしなければ、結婚前の氏に戻るという仕組みは、当ブログでもたびたび取り上げています。そこで、男女が婚姻し、女性が男性側の氏を名乗ることになった場合を想定して、これ以外の氏の変更について取り上げてみましょう。

 夫婦が離婚した場合で、お子さんの親権が母親になり、母親が婚姻前の氏に戻る場合、お子さんの氏は原則として婚姻時の氏のままとなります。

 このような場合で、お子さんを母親の氏に変更したい場合には、家庭裁判所に「子が、父または母と氏を異にする場合」にあたるとして氏の変更の許可を求めます。この場合の「子」には特に未成年に限るなどの年齢制限が設けられていないため、子が20歳を超えている場合でもこの手続きで大丈夫です。

 離婚とは異なり、婚姻していた夫が死亡した場合、妻はそのまま婚姻時の氏を名乗ることになり、婚姻後の氏には戻りません。この場合で、妻が婚姻前の氏に戻りたい場合は、役所に「復氏届」を提出することにより、婚姻前の氏に戻ることができます。この手続きには、特に期間制限は設けられていません。

 また、この手続きによって母と子の氏が異なってしまった場合には、家庭裁判所で子の氏の変更の許可を得ることで母の氏を名乗ることになります。

 そのほか、氏の変更の許可を求める場合として、離婚後も婚姻時の氏を名乗っており、再婚して再婚相手の氏になった後、再婚相手と離婚をした場合に、一度目の婚姻の氏ではなく生来の氏に戻りたい場合(千葉家庭裁判所平成11年12月6日家庭裁判月報52巻5号143頁)、元暴力団員としてその氏を周知されている者が更生のために氏を変更したい場合(宮崎家庭裁判所平成8年8月5日家庭裁判月報49巻1号140頁)、外国人の夫と婚姻した妻が、自己の氏と外国人の氏を結合させた氏(ハロルド甲野)へ変更したい場合(東京家庭裁判所平成6年10月25日家庭裁判月報47巻10号75頁)などがありますが、「子が、父または母と氏を異にする場合」とは異なり「やむを得ない事由」(戸籍法107条1項)が必要となり、本当に氏を変更するべきなのかを厳格に審査されることになります。

弁護士 井上真理