親は、子に対し、親権の効力として懲戒権を有しています。その根拠として民法822条1項は、「親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。」と規定しています。
この懲戒として、子に対し、時には手をあげることも必要になります。ただ、行き過ぎると虐待になりますので、懲戒権の行使にも難しい側面があります。
ところで、民法822条1項が規定する懲戒場とはいったいどんな施設なのでしょうか。
答えは単純で、実は懲戒場という施設は存在しないのです。確かに、子を押入れに閉じ込めて反省を促すといった方法で懲戒権を行使する方法がありますので、懲戒場に代替する手段は存在します。また、懲戒場に入れるには、家庭裁判所の許可が必要なため、わざわざ懲戒場に入れるという面倒な手続をとる親はいないでしょう。その意味で、懲戒場という規定は死文化しているといえるでしょう。
弁護士 大河内由紀