民法752条は、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と規定しています。  

 つまり、夫婦には、同居に義務があるのです。夫婦の一 方が同居の義務に違反している場合、他方は、同居の審判や判決を求めることができるとされています(ただし、同居を直接強制したりすることまではできません。)。

 では、夫婦の別居は、離婚事由に当たるのでしょうか。離婚事由を規定する民法770条は、明文で夫婦が別居に至ることを離婚事由としてはいません。そこで、夫婦の別居が770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚事由に該当するかが問題となります。

 この点、裁判実務では別居が3,4年に至った場合、離婚が認められる傾 向にあるようです。そのため、単に別居そのものが離婚事由となるのではなく、別居の期間の長短が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するのかの考慮要素となります。

 ただ、単純に別居の期間の長短だけで、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかが判断されているわけではなく、別居に至る原因や離婚を請求する側の有責性の程度等も考慮されています。

 例えば、配偶者からのDVが原因で別居に至った場合、比較的別居が短期間であっても、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして、DVを受けた側からの離婚請求は認められ易いといえるでしょう。

 また、別居が長期間に渡っても、離婚を請求する側に不貞行為等の有責性ある場合、離婚請求は認められ難いといえるでしょう。

 以上をまとめると、別居の期間が3,4年に至れば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚事由に該当し易いですが、別居の期間以外の個別具体的な事情を併せて考慮して、変動があるといえるでしょう。

弁護士 大河内由紀