こんにちは。本日は、離婚事件を弁護士に依頼する意味についてお話しします。

 離婚事件は、極めて個人的な問題であるせいか、夫婦や親族間での話合いによって解決しようとする傾向が強いと思われます。たしかに、夫婦の個人的な問題においては、法的理論よりも双方がいかに気持ちに折り合いをつけるか、といったことが重視されがちですから、これは当然のことでしょう。

 しかし、中には、話合いしようとしたけれどまとまらなかった、とか、そもそも話合いにならないといったケースも当然あります。たいてい、弁護士に相談にいらっしゃるのはこの時点です。もめた末に、よくわからなくなったから相談したい、ということです。欲を言えば離婚を決心したときに、最初から相談されるのがベストだと思いますが、弁護士が身近にいるという人はそう多くないでしょうから、ある程度話合いをした段階で相談にいらっしゃるというタイミングは当然のことと思います。

 この時点で相談にいらっしゃるメリットは、それまで話し合ってきた分、争点がだいたい明らかになっているということです。争点が明らかになっていれば、弁護士としてもアドバイスがしやすいです。また、話合いの進行状況を見て、さらに弁護士が入って話合いを続けるか、調停などの裁判所の手続に移るか、の判断もできます。

 この時点では、まだ、弁護士に実際に依頼するのか躊躇する人もいると思います。たしかに、平均的なご家庭にとって、弁護士の費用は安いものではありません。そこで、費用をかけてでも弁護士を依頼すべきかどうかの判断を迫られるわけです。

 これは私の経験からの感想ですが、相手方が理不尽な主張を繰り返しているパターンでは、この時点で弁護士を依頼してしまう方が解決までの道のりが早いと思います。そして、弁護士を立てての交渉より、調停にうつってしまった方がよいケースが多いです。理不尽な主張をする人は、相手方の弁護士からいかに正当なことを言われても、折れません。ますますヒートアップして行く人もいます。調停は、ある程度法的知識のある調停委員が立ち会いますので、調停委員を味方につけて、いかに理不尽な主張かについて説得できます。

 相手方が言っている事に納得がいかないんだけど、相手方は理屈っぽいし、言っていることは正しいように思える、という場合も、一度弁護士に相談された方が良いと思います。相談にいらっしゃって、「自分が間違っているのかと思っていたけど、相手方の言っていることがめちゃくちゃなんですね。」とおっしゃる方が、けっこういます。離婚トラブルに巻き込まれると、理不尽な主張なのかどうなのかの判断すらつかなくなってしまったり、そもそも相手方に上から押し付けられる夫婦生活を続けてきたために、理不尽だという判断をすることすらできなくなっているケースも結構あります。

 また、財産分与や養育費などの金銭的な争点を主な争点として訴訟に移ることはあまりお勧めしません。これらは、計算方式が決まっていますし、よほどのことがない限り、その計算に基づいて算出された金額を基準に判決がなされるからです。相手方があまりにも頑固で、理不尽な主張を曲げない人であれば、訴訟にうつるのもやむをえないとも考えられますが、財産分与でもめて訴訟になりそうだと相談にいらっしゃるケースの中には、「調停でまとまるようなケースなのに、もったいない…」と思われるものが多くあります。訴訟になれば長期化します。長期化してでも取るべき財産や養育費の利益があればよいのですが、その判断を専門家でない方がするのは難しいかもしれません。

 親権や監護権争いは、本気でやるなら、とくに早めに弁護士に依頼したほうがよい争点です。中でも、父親が親権や監護権を取りたい場合は、その必要性が高いです。たしかに、依頼したからといって、必ず勝てるようなものではありませんが、当事者からは、裁判所の視点を理解しづらいのではないかと思います。

 最近、早めに相談に来ていただければ…と思うことが続いたので、いろいろ書いてしまいました。ただ、早めに相談して損はないと思います。